【NQNロンドン=蔭山道子】逆風にさらされる欧州高級ブランド株だが、2023年に話題となった「クワイエット・ラグジュアリー(静かなぜいたく)」のトレンドはもうしばらく続きそうだ。超富裕層をひき付けるブランドはどこか。投資家は選別を厳しくしつつ、高額消費関連株へ関心を向け続けている。
中国「ゼロコロナ」政策の悪影響が薄れたかと思えば、このところ欧州景気の悪化が進む。欧州高級ブランドの売り上げについて、株式市場では24年の伸びは鈍化するとの予想が多い。
年明け以降、英バーバリー・グループと紳士服大手の独ヒューゴ・ボス、「カルティエ」などを抱えるスイスのリシュモンが、それぞれ23年10~12月期の販売状況を公表した。公表当日の株価の反応は明暗を分けた。
前年同期比で減収となり、24年3月期通期の営業利益見通しを引き下げたバーバリーの株価は前日比5.5%安。2ケタ増収ながらもEBIT(利払い・税引き前利益)が市場予想を下回ったヒューゴ・ボスは9.7%安と下落した。一方、収益の柱である宝飾品が好調で全体では1ケタ増収を確保したリシュモン株は10.4%高と買われた。
高級ブランドを巡っては、このところ「アイコニック(象徴的)」「クラシック(古典的)」「タイムレス(不朽の)」などがキーワードとなっている。ブランドのロゴやデザインは控えめに、それでいて上質な高級品であることは分かる「クワイエット・ラグジュアリー」というトレンドだ。
米証券スタイフェルのアナリスト、ロジェリオ・フジモリ氏は、高級ブランド株への投資テーマは「高い品質への逃避」と指摘する。消費者はより強いブランドに引き寄せられ、「絶対的な高級品」に優位性があるとみる。高級ブランドに限定しても「質への逃避」が重要になっているというわけだ。
フジモリ氏は販売が振るわなかったバーバリーについて、より高価な製品を売っていくための「象徴的で時代を超越した製品の支柱となるものが欠けている」とし、目標株価は1550ペンスから1400ペンスへ引き下げた。
22日時点の株価を1年前と比べると、バーバリーは47%下回っている。これに対してリシュモンは1割程度、ヒューゴ・ボスは1%程度の下落にとどまる。長期的に遡っても株価の動きにはばらつきがある。
※バーバリー(オレンジ)、ヒューゴ・ボス(白)、リシュモン(青)の株価推移(1年前を100として指数化)
米BofAは、24年のセクター全般の増収率を4%(為替変動の影響を除くベース)と予想している。長期的な平均を下回り「夜明け前の暗闇」という。スタイフェルは6%(合併や為替変動の影響を除くベース)と予想し、投資家は選別的、保守的なスタンスで臨むべきだと強調する。
25日にはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが23年12月期通期の決算を発表する。クワイエット・ラグジュアリーというトレンドにあってとりわけ脚光を浴びるようになったブランドとされる「ロロ・ピアーナ」は、LVMHの傘下にある。今後の戦略も含めてどのような認識、見通しを示すか注目だ。