QUICK Money World(マネーワールド)

個人投資の未来を共創する
QUICKの金融情報プラットフォーム

ホーム 記事・ニュース 「今回は違う」の使い方①:聞こえ始めた3つの「今回は違う」(フィデリティ投信 重見吉徳氏)

「今回は違う」の使い方①:聞こえ始めた3つの「今回は違う」(フィデリティ投信 重見吉徳氏)

記事公開日 2024/3/27 16:00 最終更新日 2024/3/27 16:00 米国・欧州 米景気 米金利 フィデリティ

金融市場の経験則では、「今回は違う」(This time is different.)という言葉が聞かれ始めるとそろそろ終わり・ピークが近いといわれます。なぜなら、金融市場はサイクルで動くためです。

言い換えれば、「今回も同じ」が正解で、「今回は違う」と言えば間違います。

実体経済の景気循環や金融市場のブームとバスト(破裂)といったサイクルは、大小の過信と不信、あるいは楽観と悲観に基づいて生じるでしょう。

そうしたサイクルから逸脱する「今回は違う」(This time is different.)はいわば「掟破り」であり、「今回は違う」は金融市場の禁句とも言える言葉です。

ひょっとしたら、金融市場の一部の参加者は、単なる願望を表現するため、あるいは他者を新たな買い手として誘い込むために、間違うとわかった上で「今回は違う」と表明する場合もあるかもしれません。ほかにも「いつか終わるだろうが、ついていくしかない」と悟って「今回は違う」を認める参加者もいるでしょう。そうした意味においても、「今回は違う」は注意して聞かなければなりません。

たしかに技術革新によって、われわれは「今までとは違う世界」にたどり着くことができます。それまでの常識が通用しない世界です。鉄道や自動車、航空機、電気、電話、インターネットなどはわれわれをそうした世界に連れ出しました。

しかしながら、技術革新には熱狂がつきものです。ひとびとは「過剰を上乗せ」します。需要をはるかに超える発注や生産、設備投資が生じたり、ファンダメンタルズを超える水準にまで株価が打ち上げられたりします。

「今回は違う」を確固たるものにした著書

金融市場において「今回は違う」(This time is different.)ということばを確固たるものにしたのは、アメリカの2人の経済学者が過去800年間の金融危機について調べた著書、“This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly”でしょう。

以下、同書から引用します。

「過去800年間に起きた危機の細部に分け入り、データの山をつぶさに調べた末に、私たちはこう考えるようになった。金融危機直前の絶頂期に投資家が聞かされてきた助言は、「今回はちがう」という認識に基づいていた、ということである。その代償は大きかった。「昔のルールはもう当てはまらない」という主張は熱狂的に受け入れられ、金融のプロが、さらには政府の指導者が、われわれは前よりもうまくられる、われわれは賢くなった、われわれは過去の誤りから学んだ、と言い始める。そのたびにひとびとは自分で自分を納得させた。過去のブームはほぼ決まって悲劇的な暴落につながったものだが、今回は大丈夫だ。なぜなら現在の経済は、健全なファンダメンタルズや構造改革や技術革新やよい政策に支えられているのだから、と。」(カーメン・Mラインハート、ケネス・Sロゴフ著、村井章子訳『国家は破綻する――金融危機の800年』日経BP社)

最近になって「今回は違う」がいくつか聞かれ始めました。3つ取り上げてみます。

聞かれ始めた「今回は違う」①:今回は景気後退は来ない

まず、「今回は景気後退は来ない」との主張です。

過去の金融市場のパターンでは、すべてではないものの、多くのケースで「利上げや逆イールド(=長短金利の逆転)のあとは景気後退が来て」います。

過去のパターンは、長短金利逆転の後に景気後退。「今回は違う」か?

しかし、景気拡大がつづくなかで、「今回は違う。これまで言われてきたような『ソフト・ランディング』ではなく、『ノー・ランディング』であり、米国経済は『着陸』しない」(≒浅い景気後退すら生じない)との見方が出てきています。

たとえば、ロイター通信社は3月1日付の記事で、複数の運用者やストラテジストの発言を取り上げて、逆イールドはもはや景気後退の前兆ではないと報じています。

聞かれ始めた「今回は違う」②:今回はバブルではない。

もうひとつ聞かれるのが、「今回はバブルではない」との主張です。

現在の米国株式市場も、一部のテクノロジー株式が偏った上昇をみせ、しかもバリュエーションも高水準になっており、2000年の頃の米国株式市場と似ているようにみえます。

情報技術セクターの株価上昇は、2000年頃のITバブル時に似る。「今回は違う」か。

しかし、株価上昇がつづくなかで、「今回は違う。今回は2000年のITバブルの頃とは異なり、大型テクノロジー企業には利益が伴っているので、バブルではない」との見方が出てきています。

たとえば、3月11日付の米Fortune誌の記事や、同12日付のBloomberg社の記事では、主要な米投資銀行の複数のストラテジストが「現在の株式市場やテクノロジー株式の上昇はバブルの状況ではない」と考えていることを伝えています。

もうひとつの「今回は違う」③:今回はインフレではないか。

2点目の「今回はバブルではない」に関連して大事なのは、いま上昇しているのは、人工知能(AI)や半導体に関連する株式や『マグニフィセント7』だけではないということです。

ゴールドやビットコインもそうですし、そうしたキャピタル・ゲインがある資産だけではなく、(100で満期償還される)米国のハイ・イールド債券も買われています。

価格上昇は、半導体・AI関連株式、「Mag7」だけではない。ETFの組成もあり、ビットコインの価格は上昇。

キャピタルゲインを狙う株式や商品だけでなく、100で満期償還されるハイ・イールド債券も買われている。

さらには、高金利で圧迫されていたはずの米国の住宅価格も再び上昇しています。

住宅ローン金利の大幅上昇も価格は回復傾向。

このように、多くの資産価格が上がる状況をみると、もうひとつの『今回は違う』がみえてきます。

それは、「今回こそインフレが来るのではないか」というものです。

3つの「今回は違う」

ひとびとがインフレのリスクを気にしているのであれば、不換紙幣を持つのを止め、退蔵できるモノや資産に換えようとします。

インフレのリスクを感じさせる要因は、(引き締めが望ましいときの)中央銀行による貨幣発行の増加や金融緩和であり、これを招く公的債務の増加や金融機関の苦境でしょう。

すでに、実体経済と金融政策は「債務の虜囚」になっている可能性があります。

(次回につづきます)


フィデリティ投信ではマーケット情報の収集に役立つたくさんの情報を提供しています。くわしくは、こちらのリンクからご確認ください。
https://www.fidelity.co.jp/

  • 当資料は、情報提供を目的としたものであり、ファンドの推奨(有価証券の勧誘)を目的としたものではありません。
  • 当資料は、信頼できる情報をもとにフィデリティ投信が作成しておりますが、その正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。
  • 当資料に記載の情報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。また、いずれも将来の傾向、数値、運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
  • 当資料にかかわる一切の権利は引用部分を除き作成者に属し、いかなる目的であれ当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

QUICK Money Worldは金融市場の関係者が読んでいるニュースが充実。マーケット情報はもちろん、金融政策、経済情報を幅広く掲載しています。会員登録して、プロが見ているニュースをあなたも!詳しくはこちら ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは

マーケット展望やアナリストの分析などすべての記事が読み放題!会員登録バナー

著者名

フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト 重見 吉徳

20208月、フィデリティ投信入社。農林中央金庫や野村アセットマネジメントにて外国債券の運用に従事。アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年に J.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社。個人投資家や金融機関、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。昭和の歌が好き(演歌・洋楽を含む)。


ニュース

ニュースがありません。

銘柄名・銘柄コード・キーワードから探す

株式ランキング

コード/銘柄名 株価/前日比率
1
205
+22.75%
2
202
-16.87%
3
244
+17.3%
4
285
+14.45%
5
5247
BTM
2,254
+21.57%
コード/銘柄名 株価/前日比率
1
1,358
+28.35%
2
204
+22.15%
3
5247
BTM
2,254
+21.57%
4
246
+18.26%
5
285
+14.45%
コード/銘柄名 株価/前日比率
1
827
-19.08%
2
9399
ビート
2,230
-18.31%
3
202
-16.87%
4
1,557
-8.35%
5
1,417
-7.38%
コード/銘柄名 株価/前日比率
1
41,160
-1.65%
2
16,460
-0.78%
3
23,205
-2.4%
4
8,152
-0.82%
5
7011
三菱重
2,209.5
-0.91%
対象のクリップが削除または非公開になりました
閉じる
エラーが発生しました。お手数ですが、時間をおいて再度クリックをお願いします。
閉じる