(9/27 15:51更新)自由民主党は総裁選挙の投開票を行い、決選投票の末、石破茂氏を新代表に選出した。結果発表を受けて東京外国為替市場では円相場が円高ドル安に急伸した。発表前は1ドル=146円台で取引が行われていたが、発表直後に一時1ドル=143円30銭台まで円が買われた。
今週末の9月27日(金)、岸田総理大臣の後任を選ぶ自民党総裁選挙の投開票が行われる。経済・金融政策への影響が見込まれるとあって、金融市場での注目度も高い。この記事では、QUICK Money Worldの関連記事を中心にスケジュールや市場の声をまとめる。
自民党総裁選とは?
自民党の党首である総裁を選ぶ選挙で、実質的に次の首相を選ぶ選挙となる。国会議員と全国の党員などによる投票で争われ、有効票の過半数を得た候補者が新総裁に選出される。1回目の投票で過半数を取る候補者がいない場合、上位2人の決選投票になる。
今回の総裁選は過去最多の9人が立候補するなど混戦模様で、決選投票にもつれ込む可能性が高いとの指摘がある。過去の総裁選では、決選投票での「逆転」で新総裁が決したケースもある。
岸田文雄首相の任期満了に伴う自民党総裁選挙は9月12日に告示された。立候補者は届け出順で、高市早苗経済安全保障相、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長の9名。過去最多の立候補者数となった。
自民党総裁選はいつ、何時ごろ実施される?
9月27日(金)13時から投開票が実施される。結果が伝わる時間帯は不明だが、過去の例を参考にすると、1回目の投票で決着する場合には同日の取引時間中となる15時までに結果が判明しそうだ。過半数の票を獲得する候補がおらず決選投票にもつれ込む場合は、結果が分かるのは取引終了後になる可能性がある。
2021年9月の総裁選では、14時台に決選投票の実施が伝わり、結果は大引け後まもなく判明した。
市場関係者の予想は?
9月前半に実施された市場関係者向けの調査では、小泉進次郎元環境相が新総裁になるとの予想が多い。
27日投開票の自民党総裁選で誰が総裁に選ばれるかとの設問は、小泉進次郎元環境相が52%で首位。石破茂元幹事長が22%で2位、高市早苗経済安全保障担当相が14%で3位だった。
(「株式市場からみて望ましい候補」では)高市が証券会社票でも投資家票でも小泉・石破を抑えてトップだった。2位の小林は投資家の支持が大きく、斎藤が証券会社の大きい支持で浮上していた。全体では河野・林が7%、茂木が6%で上川は2%に沈んでいる。投資家に高市・小林の支持が大きいのはアベノミクス路線継承への期待か。当選の可能性では、ここまで差がつくかと驚くほど小泉が圧倒していた。
金融市場への影響は?
金融市場への影響が大きいとみられているのが、日銀の利上げをけん制する発言をしてきた高市早苗経済安全保障相が新総裁に選出されるケースだ。
日銀の政策運営に大きな影響が出るとみられているのが「高市首相」が誕生した場合だ。高市氏は23日公開のインターネット番組で、日銀の政策運営について「金利を今、上げるのはあほやと思う」と強い表現で批判した。総裁選の直前になって高市氏が勢いをつけつつあり、岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「自民党総裁交代で利上げシナリオが頓挫する可能性を意識せざるを得ない」と語る。
マクロ経済政策は財政健全化・金融正常化を掲げる石破氏や河野氏と、財政拡張・金融緩和路線への回帰を掲げる高市氏で見解が大きく異なる。河野氏は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)に関して「金利のある新常態を踏まえ、規律ある財政を取り戻す」と訴え、経済・財政や社会保障の推計や見通しを適正にする「独立財政機関」の設置などを掲げた。これに対し、高市氏は「(PBを黒字化する)目標は自然に達成される」とし、戦略的な財政出動や金融緩和の継続こそが強い経済の実現に必要だと主張している。
関連銘柄は?
日銀の金融政策の影響を受けやすい銀行株のほか、各候補者の掲げる政策の影響を受ける銘柄が関連銘柄として意識されている。
タクシー配車システムを手掛けるJVCケンウッド(6632)は、ライドシェアの全面解禁を主張する小泉氏が総裁選で当選すれば恩恵を受けるとの見方から8月以降株価が4割近く上昇した。ライドシェア関連銘柄ではFIG(4392)やタクシー配車アプリ「GO」を展開するディー・エヌ・エー(2432)、都内タクシー大手の大和自動車交通(9082)も上昇する場面があった。
市場では27日に投開票を控える自民党総裁選で「日銀の早期利上げをけん制する高市早苗経済安全保障担当相が新総裁に選出される可能性が意識されている。日銀が追加利上げに慎重姿勢を示していることもあり、金融株の持ち高を落とす動きにつながっている」(国内運用会社のファンドマネジャー)との声も聞かれた。
27日に投開票を控える自民党総裁選で候補者らがサイバーセキュリティーの強化を政策に挙げており、コンピュータセキュリティー関連サービスを提供するFFRI(3692)に思惑的な買いが入っている。