中国人民銀行(中央銀行)は14日、金融機関に短中期の資金を供給する際の金利を0.05%引き上げた。13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利の引き上げから間もないタイミングの「利上げ」からは、人民元相場が不安定になったり資本が流出したりすることへの恐れが透けてみえる。
人民銀は公開市場操作(オペ)の売却条件付き債券購入(リバースレポ)の7日物金利を2.45%から2.50%へ、28日物金利を2.75%から2.80%に引き上げた。さらに中期貸出制度(MLF)による期間1年の貸出金利を3.20%から3.25%に引き上げた。人民銀は声明で「拡大している市場金利とオペ金利の開きを縮めるため」とする一方、「(市場金利の上昇は)米連邦準備理事会(FRB)の利上げを受けての正常な反応」と説明した。政策金利である預金と貸し出しの基準金利は変えていない。
人民銀は今年3月に米利上げ決定直後に短中期資金の金利を0.1%引き上げた。だが、いわゆる政策金利を動かしてはいないので、人民銀は「利上げではない」と主張。あくまで資金需給の変化に従った措置だと強調していた。今回は金利引き上げが米国の動きに追随したことを事実上、認めたに等しい。
香港資産運用会社ハリスフレーザーの黄耀宗ストラテジストは今回の中国の「利上げ」について「人民銀が人民元の安定を維持するため、米中の金利差が縮小しないように動いたのだろう」と解説する。
足元の人民元相場は落ち着いているが、米国で緩やかとはいえ利上げサイクルが回り続ければ人民元売り・米ドル買いの圧力が高まる。人民元安が加速すれば、中国からどんどんマネーが流れ出すリスクが高まる。急激な人民元安は中国の企業や経済に大きな打撃を与えるため、人民銀は相場の動きに常に神経をとがらせている。
米国が6月の利上げを決める前には、人民銀が人民元の対ドル取引の基準となるレート「基準値」の算出方法を見直すということもあった。前日の終値を参考にするのをやめ、人民元相場が大きく変動しても基準値をあまり動かさない手法に変えた。市場からは「管理相場への逆戻り」とのそしりも出ていた。
FOMCメンバーが13日示した政策金利の見通しに基づくと、2018年の利上げは0.25%の幅で3回というのがメーンシナリオ。中国当局は引き続き米国にらみの市場運営を強いられそうだ。
【NQN香港・林千夏】
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