日経QUICKニュース(NQN)=編集委員 今晶
6日の東京外国為替市場で円相場は高く始まった後に下げに転じ、一時1ドル=107円11銭と前日17時時点に比べ1円17銭の円安・ドル高水準を付けた。中国人民銀行(中央銀行)が6日の人民元基準値を対ドルで約11年ぶりの安値に設定したものの、市場が想定していたほど元安ではなかったとの受け止めから米中の貿易摩擦激化への懸念が和らいだ。米国のドル安志向や米利下げ局面の長期化などを見込んで円買い・ドル売りや債券買いに傾いていた参加者が持ち高縮小を迫られた。
「『7』をキーワードにコンピューター・プログラムを作動させている投機筋がいる」。市場の一部でそんな会話が交わされていた。5日、米中の摩擦懸念を背景とする円高・株安は日本時間の9時すぎには既に鮮明だったが、勢いを増したのは10時15分以降。中国人民銀が人民元基準値を8カ月ぶりの元安水準に決めた直後、上海市場やオフショア(本土外)の市場で元が1ドル=7元台まで下げてからだ。以降も7元台で元が下げ幅を広げるにつれて円買いは増えた。
米財務省が中国の「為替操作国」認定を発表した日本時間6日早朝の円高や日米の株価指数先物の下落もオフショアでの元安進行が引き金となった可能性が高い。1ドル=7.13元台まで元が急落する過程でドルや株の売りが膨らんだとみられる。
そこで迎えた6日の10時15分すぎ。人民元基準値は1ドル=6.9683元だった。記録的な元安水準ではあるものの「7」には届かなかった。上海市場ではその後も7元台で推移したというが、「コンピューターの大部分は基準値のほうに反応し、円買いなどの持ち高解消を急いだ」(外国証券の為替ディーラー)らしい。
5日以降の荒い動きを見る限り、高速の高頻度取引「HFT」の活力はまだ戻っていない。HFTが市場の変動率を抑える構図は望み薄のようだ。貿易を巡る米中対立が解けたわけではないため、市場関係者の多くは引き続きリスク回避や米国のドル安志向、継続的な米利下げ観測に基づく円高・ドル安局面を意識している。