インターネット上の仮想通貨ビットコインが不安定な動きを続けている。ドル建て価格は前週に1ビットコイン=1万ドルの節目を大きく割り込んだ後、一時は1万3000ドル近辺まで戻したが、足元では1万1000ドル近辺で推移する。昨年12月22日と前週の2回の急落を経験した市場参加者は上値追いに慎重で、利益確定のタイミングは早い。目先は米連邦保安官局が犯罪捜査で押収したビットコインを対象に22日に実施する入札に対し、投資家の一部で警戒感が高まっている。
出所:coindesk
足元でビットコインの投資家心理を左右しているのは引き続きビットコイン以外の「オルトコイン」だ。情報サイトのコインマーケットキャップによると、仮想通貨全体の時価総額に占めるビットコインの割合は12月上旬まで7割近かったものの、オルトコインが急上昇した前々週に33%を割り込み、ここ数日も35%前後でさほど変化がない。
本来なら前週のオルトの急落時には、ビットコインが復権する逆の動きをしてもおかしくはなかった。だが、証拠金取引などでビットコインを介したオルトコインの売り買いが増えた結果、ビットコインはオルト相場との「順の相関」がいったん強まっている。
ヘッジファンドなどの投機筋は市場機能が整ったビットコインを主な運用対象とし、先物やオプションを交えた戦略をたてている。オルトコインはイーサリアムやリップルなど名の知られた一部の通貨を除くと知識が乏しい。
「正体がはっきりせずいつ消えてしまうかわからない小さなオルトにまで目を配らなければならないとすれば、しばらくビットコインの下落リスクを警戒しておく必要がありそうだ」。ある仮想通貨ファンドのマネジャーからはそんな声が聞かれた。
市場はコイン需給にかかわる材料にかなり神経質になっている。例えば米連邦保安官局が米東部時間の22日9時30分~15時30分に実施するビットコインの入札が話題だ。
連邦保安官局は犯罪捜査の過程で押収したビットコインを売り出す。総額3813ビットコインで500コインと100コインがそれぞれ5セット、残る813コインは一括で売却される。応札者は20万ドルの証拠金を差し入れ、米政府が認めた身分証明書の写しなどを提出する。
同様のビットコイン入札は今回が初めてではない。2014年には違法薬物や銃を取引するサイトの「シルクロード」摘発で得た3万ビットコインがオークションにかけられた。
14年よりも市場規模が広がり、ファンド勢による数百、数千コイン単位の取引が恒常化してきた現在、3813ビットコイン程度の入札は需給環境には大きな影響を及ぼさない――。そう断じるのは簡単だが、14年といえば仮想通貨の市場がまだよちよち歩きで、1ビットコイン=1000ドルの背中がはるか遠くに見えていたころだ。
1万ドルを超えたいまは、3813コインでも14年の3万コインをはるかに超える規模のドルやユーロ資金が行き来する。市場の一部では「少額入札であっても軽視はできない」との懸念がくすぶっている。
【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】
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