21日の東京株式市場で、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の普及に欠かせぬインフラ設備の企業がにぎわった。EV向けの充電スタンドを開発するモリテック(5986)や水素ステーションを展開する岩谷産(8088)などで、「経済産業省が給油所(ガソリンスタンド)でEVやFCVに必要な電気や水素を供給できるように基準を緩める」との報道がこれらの銘柄に買いを誘った。
モリテック株は前日比4.8%高の1033円、岩谷産株は1.3%高の4130円といずれも続伸した。太陽光発電などクリーンエネルギーと組み合わせた充電器を製造するアルバック(6728)も買われ、終値は3.7%高の6420円だった。
【21日のモリテック(青)、岩谷産(赤)、アルバック(緑)の株価推移】
21日付の日本経済新聞朝刊によると、ガソリンの給油スペースから一定距離を置いてEV向けの充電設備やFCVで使う水素供給設備の設置が義務付けられているが、規制緩和で併設が可能になるという。株式市場では「単独で設置するより初期費用が大幅に抑制でき、需要拡大のきっかけになる」(国内証券のアナリスト)との期待が高まった。
対照的に、ガソリンスタンド「ENEOS」を展開するJXTG(5020)や子会社を通じてスタンドを運営する昭和シェル(5002)の株価は上値が重かった。規制緩和は一見すると買い材料ながら、エネルギー担当の経験が豊富な独立系アナリスト、伊藤敏憲氏は「投資家が好感しなかったのは当然」とみていた。
EVの充電には20~30分ほどかかるため、ガソリンスタンドにとっては利用の回転率低下につながる。エンジンの整備など付随サービスもガソリン車に比べて少なくなる。
【21日の昭和シェル(青)とJXTG(赤)Gの株価推移】
環境規制などによりガソリン需要はこのところ年1~2%ずつ減少している。ガソリンスタンドにとっては、世界的に普及が進み始めたEVやFCVへの対応は不可避だろう。それでも、EV充電などだけでは収益貢献がさほど期待できないとなれば「カー用品や車に関わる保守サービスなど親和性の高いサービスの展開が今まで以上に必要になる」(楽天証券経済研究所の窪田真之所長)との見方があった。
【日経QUICKニュース(NQN) 太田明広】
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