株式相場の方向感が定まらぬ一方でボラティリティ(変動率)が大きくなる中、持っている資金より多くの金額の株式取引ができたり、株価の下落局面でも利益を出せたりする信用取引への関心が高まっている。東京証券取引所が発表する信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は約10年ぶりの高水準で推移している。
取引のバリエーションを増やす信用取引は投資家にとってメリットが大きい半面、投じた自己資金を超える損失が生じて市場の混乱を増幅させる可能性があるなどリスクも伴う。そのため、過度の利用を抑える目的で東京証券取引所が規制をかける場合がある。
QUICK端末のナレッジ特設サイト「信用規制モニタ」では、「日々公表銘柄」(通常は週一回公表する信用取引残高を毎日公表する銘柄)に最近指定されたり、委託保証金率の引き上げ(増し担保)対象になった銘柄を一覧にし、規制後の株価を確認できる。
日々公表銘柄になった段階ではまだ実際の取引は制限されない。しかし取引額に対する担保の割合である委託保証金率が引き上げられると、資金流入が細るとの懸念から一時的に株価の大幅下落につながるケースが多いようだ。3月に入り株価が上げ足を速めていたヴィンクス(3784)の場合、20日の信用規制実施を受けて株価が急落。規制から22日までに12%安となった。逆に信用規制が解除になると資金が戻るとの期待で株高を招く展開が多い。
これから信用規制や解除の対象になる可能性が高い銘柄も「シグナル点灯銘柄」としてチェックできる。「発生スコア」として示している予測の精度については継続的に高めていく方針で、参考情報として活用できる。
株の先安観が強まったときには株を借りて売りから入る信用売り(カラ売り)が盛り上がるが、証券会社が貸し付ける株式が不足すると株を借りるための手数料(逆日歩)が発生する。投資家にとっては信用売りをするための追加のコストが生じることになる。同サイトでは逆日歩の「発生スコア」も一覧にしている。発生スコアは過去の信用・貸借取引残高などから統計的に計算している。これから信用売りに動くのが得策かを判断するうえで役立ちそうだ。
【QUICKナレッジコンテンツグループ・内山佑輔】