前日の米株式相場の急落を受け、23日の東京株式市場で日経平均株価が大幅安となった。目先の相場展開を占ううえで、市場関係者の間では機関投資家による立会時間外の取引への関心が高まっている。3月期決算企業の配当総額が2017年度は過去最高の13兆円に達するとみられ、配当再投資の買いが相場を下支えする可能性があるためだ。
東証の立会外取引と日本証券業協会の立会外取引の売買代金の合計額をまとめたところ、3月16日以降、20日までは連日2兆円を超える日が続いていた。この間の最高だった19日は概算2兆2000億円。同日の東証1部の売買代金(2兆1678億円)を上回る規模だ。22日は概算1兆2000億円程度に減少したが、1~15日までの1日の平均(概算1兆円)を上回る。
取引主体は主に3つとみられている。第1は年度末を控えた国内機関投資家による通常の銘柄入れ替えだ。「運用担当者は、ベンチマーク(運用指標)よりもパフォーマンスの悪い銘柄を翌年度に持ち越したくないため、3月中にポートフォリオ内で銘柄を入れ替えることが多い」(国内証券の情報担当者)。こうしたケースでは、大口注文による相場への影響を抑えるため、立会外取引が利用される。
第2は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金基金だ。GPIFなど国内年金は年度末に向けて、持ち高を維持するために、株主総会後に受け取る配当を先回りして投資する「配当再投資」の買いが必要になる。
第3は海外投資家や外国証券だ。上場株式の受取配当金にかかる源泉所得税は「海外の非居住者が20.42%、国内法人は15.315%かかる」(東京国税局の源泉所得税担当者)。従って、外国人は配当を海外の本店勘定ではなく、日本国内の支店勘定で受け取った方が税負担が軽い。
そのためには、保有株式を海外から国内に移管するためのクロス取引が必要で、立会外取引の急増につながっている。「こうしたケースは例年、3、9月の決算期末にかけて多くなる傾向がある」(東海東京調査センターの鈴木誠一シニアマーケットアナリスト)。
第1と第3のケースは相場には基本的に中立要因だ。一方、第2のケースは相場の下支え役となる。23日の立会外取引は20日に比べ減少したが、配当再投資の買いは今年度いっぱい株価指数先物取引や立会外取引で続くとの見方がある。
【日経QUICKニュース(NQN) 楠千弘 張間正義】
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