28日の東京株式市場でパナソニック(6752)株が急落した。米テスラ社の電気自動車(EV)が起こした死亡事故を巡り、米当局が調査を始めたと発表したのがきっかけだ。テスラに車載用電池を供給するパナソニックの業績に響くのではないかとの懸念が売りを促した。テスラの量産型EV「モデル3」の生産遅れがもともと重荷になっていたパナソニック株に、新たな逆風が吹き始めた。
米運輸安全委員会(NTSB)が27日、ツイッターに「23日に発生したテスラ車の死亡事故を受け、調査官を派遣した」と投稿した。28日のパナソニック株は一時前日比100円50銭(6%)安の1549円を付けた。権利落ちを考慮しても5%安と大幅に下落した。
一部報道によると、死亡事故があったのは主力の多目的スポーツ車(SUV)「モデルX」で、事故後に車載用電池が炎上したという。パナソニックはモデルXを含めたテスラ車に電池を納入している。パナソニックの広報担当者は「当局の調査中でコメントは控える」とする一方、株式市場では「調査結果次第ではテスラの自動車生産が滞り、パナソニックの業績にも響きかねない」と警戒した売りが優勢になった。
投資家の間では、テスラの業績拡大をテコにした車載用電池の需要増がパナソニックの成長要因になると期待は高かった。だがテスラの業績改善に大きくつながるとみられている新型車の「モデル3」では量産の開始時期の先送りが続いている。QUICKファクトセットがまとめた市場予想では、2018年12月期のモデル3の生産台数は約15万台。昨年8月時点は22万台だっただけに期待値は下がっている。
クレディ・スイス証券の西村美香リサーチアナリストは「モデル3の生産工程の自動化が見通せる19年3月期のパナソニックの営業利益は、電池需要が拡大して今期比で2割超増える」との予想をメインシナリオとする一方、「モデル3の生産がさらに遅れると株価にはマイナスになる」と懸念している。
モデル3の生産遅れを受け、パナソニックは2月に車載用電池を含む事業の18年3月期の営業利益見通しを70億円下方修正していた。テスラ以外の自動車メーカーもEV生産を拡大させるとみられ、車載用電池で優位性を持つパナソニックは中長期的に業績改善の期待があるとの声はある。ただ、株式市場では「欧州や中国メーカーがEVを主力製品に据えるのは19年以降」(国内運用会社のファンドマネジャー)との見方が根強い。テスラを巡る不安がくすぶるなかでは、EV市場全体の将来性に賭ける買いは入りづらいようだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】
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