QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏が加速する世界の半導体大手の増産投資とその影響についてレポートします。
韓国サムスン電子、SKハイニックス、東芝、米マイクロン・テクノロジーのメモリー半導体大手4社が生産能力拡大に再び着手した。時期を同じくして、中国大陸の大手ファンドと同国半導体大手の紫光集団もメモリー事業への資金と人力の投入を強化する。市場調査機関は、来年にメモリー市場が再び激しい価格競争の嵐に巻き込まれることになると警告。NAND型フラッシュメモリーの供給過多の状況がDRAMよりも深刻なものになるだろうと警鐘を鳴らす。
サムスン電子は、今後3年間で70億米ドル(約2045億台湾ドル)を中国大陸の狭西省西安市でのNANDの生産能力拡大に投じると昨年8月に発表。先月末に新工場の起工式を正式に行った。今回の投資は、すでに発表済みのDRAM増産に続く重要な投資案件であり、世界のメモリー市場に再び衝撃を与えるものとなる。
西安にあるサムスン電子のメモリー工場は現在、主にNAND製品を生産している。新工場の竣工後、同社の西安におけるNANDの月産能力は現時点の12万枚から、20万枚へと67%拡大する。
今回の工場拡張案をめぐっては、かつて韓国の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件を受けて中国が韓国に経済制裁を課したことから、韓国政府が同社に対して、西安への投資を再検討し韓国での投資を最優先にするよう求めていた。サムスン電子は韓国政府の期待に応え、韓国での半導体生産受託事業とDRAMへの投資を決定した。この投資案には、韓国の華城工場16号生産ラインを従来の2次元(2D)NAND生産からDRAM生産に改造することも含まれた。また、平沢工場での新たなDRAM生産ライン設置も決定した。同生産ラインの第1段階の生産能力は今年下半期(7~12月期)に投入される予定だ。
メモリー業界の関係者は、サムスン電子の華城工場と平沢工場におけるDRAM増産の市場への影響が今年年末に現れるとみている。2つの新工場のDRAM増産分は予測ベースで月間約23.5万枚にのぼる 。一方、韓国の大手メーカーであるSKハイニックスも中国江蘇省無錫市で新工場を建設中で、年末の竣工、2019年の設備設置を予定している。生産能力は月間12万枚 。この大手2社による生産能力拡大の進展が世界のDRAM需給にどのような変化をもたらすかに、市場は注目している。
東芝傘下の半導体事業子会社 、東芝メモリ(TMC)も2020年度までの5年間に2カ所で3次元(3D)NANDの新工場を増設する計画だ。現在、四日市にあるFab6と日本の 岩手県北上市にそれぞれ新工場を増設する。今後5年間で4つのNAND工場を保有することになる。提携先の米ウエスタンデジタル(WD)に投資分担を求めており、投資総額は3兆円を超える見通しだ。この投資により、トップのサムスン電子を追撃する。
一方、中国大陸の紫光集団傘下の長江メモリーテクノロジーズ(YMTC)は32層の3DNANDの生産に成功しており、承認に向けて製品サンプルを顧客に提出した。来年に生産能力を本格的に投入できる見通しで、市場に大きなインパクトを与えることが予測される。
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