31日の米国市場でメキシコ株に連動するiシェアーズMSCIメキシコETFが続落し、1.06%安の44.68ドルで終えた。一時は44.28ドルまで下げて1月26日以来、4カ月ぶりの安値圏に沈んだ。
トランプ政権がこの日、欧州連合(EU)やカナダ、メキシコから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を発動すると発表した。6月1日から実施するもので、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を追加する。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉期限を1日に控える中、保護貿易主義に対する警戒感が強まり為替市場でドル高ペソ(MXN)安が進む中、為替差損分も含めて弱い展開だった。
メキシコ政府は米政府の動きを受けて鉄鋼や農産物に報復関税を課すと発表した。NAFTA加盟国のカナダ株に連動するiシェアーズMSCIカナダも0.45%安で軟調だった。
31日の欧州市場でも、STOXXヨーロッパ600指数が0.63%安で反落した。独鉄鋼大手のティッセンクルップは1.26%安で弱かったが、鉄鋼大手のアルセロール・ミタルは0.32%高で小じっかり。鉄やアルミの価格上昇が警戒され、バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ、ダイムラー、ルノーといった自動車株は軒並み下げた。
31日にツイッターで「公正な貿易だ!」とつぶやいたトランプ大統領。誰が混乱の原因を作っているのか考えれば理解不能なツイートである。
今回の関税策に関して、ゴールドマン・サックスは31日付のリポートで「米国経済への影響は穏やかなものになるとみられるが、貿易政策の見通しにややネガティブなシグナルが出た」と指摘した。リポートでは、アルゼンチンやオーストラリア、ブラジル、韓国などからの追加関税が除外されていることを踏まえ、インフレ率への影響は小さいと指摘。仮にEUやカナダ、メキシコからの鉄鋼・アルミに追加関税があったとしても、「個人消費支出(PCE)コア物価指数で1ベーシスポイント(bp)の押し上げにとどまるだろう」と見込んだ。
その上で、今回の関税措置が発表されたことに対しては「カナダとメキシコにも適用されたことで、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉が早期に合意される見込みが無くなったことを示唆している」と指摘。「政権の交渉スタンスはしばしば予測不可能だが、他の交渉イベントにもリスクがある」との見解を示した。(片平正ニ)
★トランプ氏のツイッター
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1002298565299965953
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