中国などで旧正月(春節)の大型連休が始まり、今年は過去最高の700万人が日本など海外を訪れるという。しかし、日本株にとって楽観は禁物。業績を押し上げてきたインバウンド(訪日外国人)需要だが、中国の景気減速や電子商取引(EC)規制強化などで一転リスクになりかねない。
変調の兆しは1月の百貨店売上高だった。高島屋の免税の売り上げは前年同月比15.1%減まで落ち込んだ。日本百貨店協会が23日に発表した、2018年の百貨店全体(既存店ベース)の売上高で免税品の売上高は過去最高を記録し、売上高全体に占める免税品の比率は6%に迫る。百貨店は近年になくインバウンド消費の影響を受けやすい体質となった。
過去数年、日本の海外観光客向け消費で潤ってきた小売業界だが、足元で訪日客の財布の紐に業績が左右されやすくなっている。20年の東京五輪・パラリンピックの開催を控え、インバウンドは投資テーマとして意識されやすいものの、今後はより銘柄の選別が必要になりそうだ。
鉄道セクター、市場平均を上回る
例えばインバウンドの中でもディフェンシブ性が高いとされる鉄道セクター。訪日外国人は単なる消費から日本の地方などへの観光目的で訪日することも多くなっており、その移動手段として鉄道利用が増えている。
鉄道セクターはまだインバウンドのプレミアムはそれほど高まってはいないかもしれない。定番ともいえる化粧品・スキンケア、テーマパーク、旅行代理店のPBR(株価純資産倍率)が2倍超なのに対し、鉄道は1倍台半ばで家電量販店に次ぐ低水準だった。
一方で鉄道セクターの売上高営業利益率は15%(2018年3月期実績)と、上記のインバウンド関連セクターで比較すれば最も高い水準だ。株価をみても鉄道の堅調な値動きが浮き彫りとなった。JR東日本(9020)など鉄道大手(時価総額上位5社)が足元の1年間で日経平均株価を上回っているのに対して、百貨店大手(同)は下回っている。
■鉄道大手の過去1年間の株価推移
■百貨店大手の過去1年間の株価推移
インバウンドは中国からの旅行者数が圧倒的に多いが、米国もじわり増加している。このため、中国の景気減速が米国や世界に波及すれば痛手はさらに大きい。ただ、勢いが減退したとしても、マネーが向かう先もサービスなど体験型の「コト消費」のウエートが高まるのであれば、移動手段として恩恵を受けやすい鉄道セクターが日の目を見ると考えてもいいだろう。加えて鉄道会社は多くの不動産も保有しており、なかには含み益を抱えている点も投資家に安心感を与える。インバウンド投資は転換点を迎えている。(根岸てるみ)
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