手術支援ロボット「ダビンチ・サージカル・システム」に成長鈍化の懸念が浮上した。手術機器のインテュイティブサージカル(ISRG)が18日に発表した2019年1~3月期決算は増収増益だったものの、売上高と1株利益が市場予想を下回った。「ダビンチ」の販売台数は伸びたものの、市場の高い期待に届かなかった。時間外取引で株価は7%あまり下げる場面があった。
売上高は前年同期比15%増の9億7370万ドルと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(9億7500万ドル)をわずかに下回った。市場が注目するダビンチの出荷台数は235台。前年同期から27%増えたが、18年10~12月期(34%増)や18年7~9月期(37%増)からは鈍化した。販管費や研究開発費が利益を圧迫し、特別項目を除く1株利益は2.61ドルと市場予想(2.70ドル)を下回った。
15年10~12月期以降続く2ケタ増収を維持するなど、決算自体は悪くない。ただ手術用ロボット業界でほぼ独占的な地位を築いている同社に対する市場の期待は高かった。株価は好調な業績を先回りするように12日に上場来高値を付けて、過去2年間で約2倍となっていた。超えなければいけないハードルが切り上がっていたのも時間外取引の株価下落を誘った。
事業環境にも不透明感が漂う。米民主党議員が提唱する「国民皆保険制度(メディケア・フォー・オール)」導入の議論が盛り上がり、20年の米大統領選に向けて米医療制度改革や医療費削減の動きが加速する可能性がある。治療費が高額になりやすい手術支援ロボット普及の遅れにつながるとの連想が働きやすく、足元のヘルスケア関連株の軟調さはISRG株も無縁ではない。
会社側は成長維持に自信を示す。決算説明会では19年12月期のダビンチを使った手術が前期比15~17%増えるとの見通しを示した。手術時間の短さなどから患者の負担が少ない「低侵襲」のロボット手術は国内外で急速に普及しており、業界の成長余地は大きい。米国では従来の内視鏡手術からロボット手術への切り替えが進み、椎間板ヘルニアや重度の肥満を解消するための外科手術などへの適用が拡大するとみられる。
19年には一部の基本技術の特許が切れるとも伝わっており、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やメドトロニックなどの医療機器大手が20~21年にかけて参入するとみられている。ただISRGはロボット開発で先行するうえ、手術医の研修といったサービス分野でも強みがあり、競争への懸念は乏しい。にわかに浮上した成長鈍化観測を払拭できるのか、市場の高い期待を上回るまでは株価の上値は重くなるかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN ) 横内理恵】
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