QUICKコメントチーム=本吉亮
本格スタートした主力製造業(3月期決算企業)の四半期決算で、市場の注目を集めたのはやはり日本電産(6594)だった。
24日の決算発表説明会に登壇した永守重信会長は「足元で最悪期を脱し、7~9月期以降に業績回復を見込む」と語った。受注急減でリーマンショック級の事態に警鐘を鳴らした半年前からは想像もつかないほどの自信に満ちた表情だった。
2019年4~6月期(1Q)連結決算は、中国景気の減速などの影響で売上高が前年同期比3.0%減の3608億円、営業利益は38.8%減の279億円で、QUICKコンセンサス(9社平均)の1Q売上高3629億円、営業利益348億円を下回る厳しい着地となった。
ただ、永守会長は手ごたえを感じているようだ。1Q決算は前年同期比では大幅減益ながら、1~3月期(前4Q)に比べると売上高は2.2%増、営業利益は4.9倍と回復しており、「在庫処理も終えて、業績は最悪期は脱出した」と語った。中国などマーケット環境は良くないものの、「自助努力(WPR3活動によるコスト構造改革)により利益は出す」と、据え置いた通期業績の達成に自信をみせた。
市場も、強気が戻った「永守節」に勇気づけられたとみえる。25日午前の株式市場で、日電産株は大幅に続伸。前日比5.7%高の1万5030円まで買われ、7月3日以来およそ3週間ぶりの高値を付けた。
永守会長が業績改善の根拠としているのが車載事業だ。車載事業は17年度に2954億円の事業規模だったが、20年度には6000億円に倍増する見込み。そのけん引役としてエンジンに代わるモータと言われる「トラクションモータ」を挙げた。
トラクションモータとは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などにおいて駆動力を発生させる中核部品で、「モータ」「インバータ」「ギア」を一体化したシステム製品。日本電産は内製の強みと軽薄短小技術を活かし、完全機電一体型により、小型・低コストを実現させる。
7月時点のトラクションモータの受注量は、中国2社からの受注獲得で2020年度分が30万台、21年度は50万台(4月時点では20年度が20万台、21年度は21万台)に急増。足元で受注が相次いでおり、欧州のOEMメーカーからも引き合いが強く、今は生産能力の増強を課題に挙げる。
中国で第1工場が稼働中だが、第2、第3工場も建設中。欧州でも工場立ち上げを模索しているという。トラクションモータの事業規模が100万台を突破すると、収益に大きく貢献するようだ。それはHDD事業で収益を拡大させた当時と似た環境だという。
トラクションモータの利益率はどの程度まで高めるつもりなのかという問いに対して、永守会長は「もちろん利益率100%を狙う(笑)」と冗談を言うほどの余裕もみせた。中国や欧州では自動車のEVシフトが急速に進むとみられ、日本電産の車載事業の拡大につながりそうだ。
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