金融庁が2日午後に都内で開いた「つみたてNISA Meetup」(通称:つみップ)の「mama(ママ)部」は、家族連れを含む約30人の女性が参加した。今回は「経済に強いママを増やす会」と組み、新人ママ向けのイベントとして参加者を募った。
つみップは積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)に関する個人との意見交換会。昨年4月から開始し、これまで女性を対象とした「女子部」は3回、「mama部」は名古屋で1回開催していた。
■家族連れで参加、立ったまま赤ちゃんをあやすママも
東京証券取引所の協力のもと、会場は東京証券会館(東京・中央)内のカフェと、東京開催では定番である金融庁の会議室を飛び出した。集まったママは、30代が4割弱、40代が4割強。ママに連れられた夫、赤ちゃんを含む子供十数人も参加した。家族で参加した投資経験8年の女性会社員は「夫につみたてNISAの良さを知ってほしい」と話していた。
泣きやまぬ赤ちゃんの声が場に溶け込んで自然と気にならないアットホームな雰囲気に包まれて進行。立ったまま赤ちゃんを抱っこし、あやしながら耳を傾けるママの姿も見られた。
■先輩ママから説得力あるアドバイス
イベントの冒頭では、金融庁のつみップ担当職員が「今なぜ、つみたてNISAなのか」をテーマに制度の背景と狙いを説明。続いて、経済に強いママを増やす会を主宰する川元由喜子氏が「貯蓄と投資はどう違うの?」と題して講演した。
日本株ファンドの運用経験を持つ川元氏は「日本経済がデフレ期にあった過去の長い期間に、個人が現預金を保有したままだったのは間違った選択ではなかった。ただ、これから日本経済が長い目で見て成長するとみるならば、日本株市場全体に投資したほうが良い」と説いた。
また「株式投資は上がったり下がったりする紙切れを売買するイメージを持たれやすいが、ちゃんと実態が伴っている。会社の設備投資など経営活動に回り、会社の利益の増減が株式の価値に反映される」という点を企業のバランスシートの図と照らし合わせて解説した。
最後に、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)の岩城みずほ氏は「誰でも始められる資産運用の方法」として「お金の人生設計」を「6つのステップ」に分けて考える方法を紹介した。投資商品や金融機関の決定は最後の最後で、まずは「人生設計の基本公式」を参考にするなどして、老後に必要となる毎月の積み立て額やリスク資産をいくら保有するかを決めるのが先と説明した。
岩城氏は老後の生活に備える以前の問題として、住宅ローンの支払いや教育費の工面の苦労があり、自身の体験からも「教育費は本当に大変。子供が進路を変更し当初の想定通りにはいかないことも」と早めの計画的な準備の大切さを強調した。
■積極的な質疑応答が展開
少し遠慮ぎみに始まった質疑応答も、1人目が口火を切ると、積極的な質疑応答が展開された。概要は下記の通り。
Q:「出口や20年後から先はどうしたらいいのか」
A:「いつ止めるかの出口をあまり考える必要はなく、淡々と積み立てていき、必要な時に必要な額を解約するのでいい。値下がりしていて解約したくなければ、現金から必要資金を充てるのでもいい。20年後も課税口座で積み立てを続けるのは可能」(岩城氏)
「『国民の資産形成になくてはならない制度』という声が高まれば、非課税期間の制約が撤廃され恒久化する可能性もある。英国がそうだった」(金融庁職員)
Q:「ジュニアNISAの活用方法は」
A:「夫婦そろって『つみたてNISA』を満額活用することをまずは優先し、それでも余裕資金があれば『ジュニアNISA』を活用するという考え方でいいのでは。子供への投資教育を念頭に少額で『ジュニアNISA』を活用する使い道もある」(金融庁職員の個人的意見)
子供が成長した時に「長期・分散・積み立て投資」の成果を体感してもらうために、生きた投資教育の教材として「ジュニアNISA」を少額で使うというのは、子供思いのママの知恵かもしれない。子供2人と一緒に参加していた投資ブロガーの「アキウマレ」さんもそうした少額投資実践者の一人で、「3人の子それぞれの名義の『ジュニアNISA』で、毎月5千円ずつ積み立てしている」という。
■夫からも質問の挙手
Q:「どのようなタイミングで投資内容を見直したらよいか」
A:「内外の株式・債券の4資産に分散投資するのが基本とされるが、国内債券型ファンドに関しては、今の金融緩和による低金利状態では運用コストを払ってまで投資する価値が乏しいのが一例」(岩城氏)
A:「運用成績が良くないから見直すというのは間違いで、自分がとれるリスクを超えた時に資産配分を調整しリスクを抑えるのが正しい。最悪の場合、3割くらいは損することを覚悟し、2割くらいまで下がっても驚かず、慌てないのが大事。そこで売ってしまったら損が確定するが、長期には上昇し回復する可能性が高い」(金融庁職員の個人的見解)
「株価や投資信託の価格を毎日見る必要はない。値段を毎日チェックすると誤った判断につながりやすい」(川元氏)
質問の挙手は同行した夫からも上がった。
Q:「岩城氏のいう『お金の運用方法は誰でも同じ』には大いに共感する。低コスト化のおかげで運用コストの差が小さくなっている『つみたてNISA対象ファンド』の中で、最も効率的な運用をするにはどのような点に注目したらいいか」
A:「目論見書の運用方針や運用残高の伸びなどを自分でチェックして、自己責任で運用するのが大事」(岩城氏)
■つみたてNISA、7割が投信を初めて購入
金融庁職員によると、一般NISAの口座数は退職金などまとまった資金を持つ60歳以上の高齢層が半数以上。これに対して、つみたてNISAの口座開設者の85%が50歳代以下の現役世代でしかも、全体の約7割が初めて投信を購入したという。
投資初心者がつみたてNISAに向ける関心度合いは高い。つみップ参加者の投資経験もそれを裏付ける。今回の「mama部」は「投資経験なし」が全体の4割を占めた。5月に広島、福岡、姫路、大阪(女子部)で開催したつみップでは、「投資経験なし」が申し込み者のそれぞれ24%、12%、61%、34%だった。
「mama部」の参加者には「将来の教育費を工面」するうえでの「つみたてNISA」の活用が響いたようだ。2歳の子供を持つ女性は「教育費を準備するために学資保険に入っているので参考になった」という。別の女性は「一般NISAで投資しているが今年5年の非課税満期を迎える。高校生の子の学費はその収益を充てることになりそうだが、その後はどうするか思案中」と話していた。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)