QUICK資産運用研究所=小松めぐみ
資産形成を目指す個人投資家の間で、指数連動型のインデックス投資が広まりつつある。運用各社も様々なインデックスファンドを展開し、低コスト化や品ぞろえの拡充など独自の取り組みでしのぎを削っている。
「インデックスファンドNAVI」では、運用各社のインデックスファンドシリーズについて、それぞれの特徴や強みを解説する。今回は楽天投信投資顧問の「楽天・バンガード・ファンド」。運用会社の名前を冠する珍しいインデックスファンドシリーズだ。
■世界最大手の運用会社と組む
「楽天・バンガード・ファンド」シリーズは、楽天グループの資産運用会社である楽天投信とバンガード・インベストメンツ・ジャパンがタッグを組んで開発したインデックスファンドシリーズ。バンガード・グループ(以下バンガード)は、世界の資産運用会社の中でもインデックスファンド運用の最大手で、同社が運用する米国ETF(上場投資信託)は、国内でもネット証券の海外ETF販売ランキングなどで上位の常連だ。
日本で積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の対象となるファンドを提供したいと考えたバンガードがパートナーに選んだのは、ネット取引との親和性が高く、若年層との接点が比較的強い楽天投信。楽天投信としても、米国で既にネット取引を中心に低コストのインデックスファンドを幅広く提供しているバンガードと一緒に資産形成層のニーズを満たしていきたいと考えた。こうした流れで両社の名前を入れたシリーズが誕生した。
■まるごと投資の「全米株式」と「全世界株式」
「楽天・バンガード・ファンド」シリーズのポイントは、バンガードが運用する米国のETFを投資対象とするファンドであること。米国ETFへの直接投資は時差や税金などの問題でハードルが高い印象があるが、国内の公募投信に仕立てることで日本の個人投資家でも買いやすく、長期の積み立て投資に適したファンドの提供が実現した。
シリーズは合計8ファンド。特に人気なのは「全米株式」と「全世界株式」の2本だ。純資産総額(残高)が最も大きい「楽天・全米株式インデックス・ファンド<愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)>」(9I312179)の実質的な投資対象は米国の株式。投資可能銘柄のほぼ100%となる約4000銘柄をカバーし、現在日本で商品化されている米国株式ファンドの中で最大級の銘柄数を誇る(楽天投信調べ、2019年6月時点)。大型株だけではなく、中小型株も投資対象としているため、「長期的に見てパフォーマンスの向上と高い分散効果が期待できる」(楽天投信の石舘真企画部長)という。
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド<愛称:楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)>」(9I311179)は、日本を含む世界の約8000銘柄の株式に「まるごと」投資できるのが最大の特徴。このファンドも日本にある世界株式ファンドの中では最大級(楽天投信調べ、2019年6月時点)だ。
■「バランス型」は株と債券で対象2万銘柄
つみたてNISAに合わせてシリーズを立ち上げたため、長期の資産形成向けに相対的に低コストのファンドをそろえているのも特色の1つ。現在は米国ETFに投資するタイプだけでなく、複数の資産に分散投資するバランス型などを追加してラインアップを拡充している。このバランス型はバンガードのETFとファンドを利用することで幅広い資産クラスに投資できるのが特徴で、株式と債券あわせて約2万銘柄が対象になる
課題は運用精度のさらなる改善や信託報酬以外のコストの低減。なお、信託報酬に関しては投信業界の低価格化が進む中で、「状況を総合的に考慮しながら、取りうる対応を検討していきたい」(石舘氏)としている。
■特設サイトで投資家とコミュニケーション
今年5月には同シリーズの特設サイト「楽天バンガードHEADS」を立ち上げた。参考にしたのは、バンガード創業者のジョン・ボーグルにちなんだ「ボーグルHEADS」という米国の投資家コミュニケーションサイトだ。日本でも投資家と直接コミュニケーションをとれるサービスの提供を目指し、ブログのようなシンプルなサイトにした。
サイト開設後は投資家から多くの質問が届いているという。内容は商品に対する素朴な疑問から、コストに関するマニアックなものまで幅広い。今後これらの疑問に答えていくことに加え、投資家との様々なやりとりを通じてサービスレベルを一層向上させていく。
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