QUICKは19日夕に東京都内で「総括討論 NISA5年、投信窓販20年」と題した資産運用討論会を開いた。金融庁の田原泰雅総合政策局総合政策課長は基調講演で、「資産形成ビジネスの拡大は日本経済にとっても重要だ」と述べた。登壇者からは異業種の参入で「新しい顧客の開拓が進む」との指摘も出た。
資産形成を後押しするために始めた少額投資非課税制度(NISA)について、金融庁の田原氏は「リスク性の高い資産への投資が伸び悩んだ理由について考える必要がある」とも語った。
パネルディスカッションでは「貯蓄から資産形成の5年間」をテーマに議論した。日銀の購入分を除く追加型株式投信の純資産残高が足元で伸び悩んでいることについて、大和証券の相沢淳一専務取締役は「成功体験が得られず、(個人の資産形成はこの5年間で)大きく進まなかった」と振り返った。三菱UFJフィナンシャル・グループの臼井均常務執行役員も、保険に比べて「(資産形成は)自分ごととして考えるようにはまだなっていない」と話した。
一方で、コモンズ投信の伊井哲朗社長はインターネット専業証券会社で毎月の積立投資が増えていると指摘し、「非対面チャネルでは30~40代の資産形成層が市場に入り、大きな流れが出てきた」と強調した。金融庁の田原氏も「新しい制度やサービスを使おうという人が出てきているため、彼らを成功体験につなげることが重要」と指摘した。
日本の金融資産の多くを持つ高齢層に向けてのサービスについても議論した。大和証券の相沢氏は「従来の営業担当者とは違う評価体系の『あんしんプランナー』を設け、高齢層に対応している。健康や医療といった運用以外のニーズへの対応も含めたパッケージを商品として提供することも検討している」と述べた。
コモンズ投信の伊井氏は「親の口座の大きな資金の動きが子供世代が把握できるなど、テクノロジーで解決できる部分もある」と話した。三菱UFJFGの臼井氏は「長生きリスクと資産がある層に向けた対応が必要だ。3者契約を結び、取引状況を定期的に家族に通知するというサービスも手がけている」と説明した。金融庁の田原氏は「高齢化が進む中で、どのようなサービスが求められるかを考えてほしい」と話した。
20年が経過した銀行での金融商品販売については、コモンズ投信の伊井氏は「チャネルが加わったことで新しく(金融資産を)保有する人が増えたのはプラスだったが、毎月分配型などに傾斜しすぎたのは残念だった」と述べた。大和証券の相沢氏は「銀行で初めて買った人が来店して相談するケースもあり、貯蓄から投資という点では後押しになった」と説明した。
最近は、通信会社など異業種から資産運用ビジネスへの参入も目立つ。三菱UFJFGの臼井氏は「業界の競争は厳しくなるが、顧客基盤を持っている企業の参入は業界の裾野拡大に貢献する」と述べた。大和証券の相沢氏は「(資産運用ビジネスの)プラットフォームを外部企業に提供することで資産形成層にサービスを提供することが可能になる」と話した。コモンズ投信の伊井氏は「丸井グループなど異業種の参入が活発になり、新しい層を開拓している」と指摘した。
討論会には228人が参加した。パネルディスカッションのモデレーターはQUICKの北沢千秋資産運用研究所長が務めた。
【日経QUICKニュース(NQN)】