三菱UFJ国際投信は6月27日、運用の現場を個人投資家に公開した。ブログなどで自身の資産運用の内容や考え方などを発信しているブロガーとの対話を目的に継続的に開いている「ブロガーミーティング」の一コマだ。運用会社の「心臓部」とも言える運用部門を見学できるとあって、申し込みは早々に定員に達したようだ。
「ネタばれ」OK、現場で実際の業務を説明
運用会社は投資信託という商品の製造メーカーであるという考えに基づき「工場見学」と称した今回のオフィス公開は、ブロガーらの要望に応える形で実現した。三菱UFJ国際投信にとっては、情報発信力のあるブロガーに運用の現場を見てもらい、同社のファンを増やすのが狙いだ。20人あまりが東京・有楽町にある同社オフィスに集まった。
オフィス内では、運用担当者が自分の机で実際に使っているパソコンのモニターを見せながら説明。投信に組み入れた銘柄の管理や売買の発注、資金の出入りに応じた先物取引や為替予約、日頃利用している表計算ソフトなどにブロガーの目は釘付けになった。
「株価一覧のために使っているモニター5台は豪華だ」「インデックス運用は無機質でもっと機械的なイメージを持っていたが、意外に手間がかかっているのが分かった。人間くさく、ますます好きになった」「車好きが自動車の生産工場・開発現場に足を踏み入れて興奮するのと同じように、インデックス型投信のファンを増やすうまい演出」「ここまで見せてもらえるのは凄いの一言」--。参加者からは満足感を示す言葉が相次いだ。
オフィス公開に先立ち、国内株式を対象としたインデックス運用チームのリーダーが、しんようFPオフィス代表のカン・チュンド氏(写真左)と対談した。カン氏やブロガーからの質問に答える形で、インデックス運用の実態を専門的な内容まで掘り下げて詳しく解説。「コストを抑えるための努力を惜しまなければ、やればやるほど成果が出るのが楽しい」と話し、「インデックス運用の巨人である米バンガードをいずれ追い越すことを大きな目標に置いている」との抱負を口にした。
気になるインデックス運用の詳細は……(質疑応答の回答を含む)
・内外株式型のインデックス運用では指数と構成銘柄をほぼ一致させる「完全法」と、指数より少ない銘柄で連動性を維持できるようにする「最適化法」がある。最適化法は完全法だと運用コストが高くなる場合に用いる。
・組み入れ銘柄の売買執行時の手数料(コスト)をできるだけ抑えるよう努めている。
・投資家による日々の購入・売却による資金の出入りがあっても、コストを抑えながら指数に連動するように指数先物の売買を多用する。
・インデックス運用は、取引所を通さずに証券会社と相対で複数銘柄を同時に売買する「バスケット取引」という注文を多用するが、この取引は売買価格に手数料が反映されており、「売買委託手数料」を分けることができない。その結果、交付運用報告書に記載される売買委託手数料には、実際に発生した売買手数料が含まれていない場合が多い。
・主要な指数への連動を目指すインデックス型投信の場合、売買委託手数料などの費用が指数連動性に与える影響は一般的に信託報酬に比べて小さい。
・運用コストをできるだけ埋め合わせし、指数への連動性を高められるように株式の貸借(レンディング)契約による貸株料を得るようにしている。
・ベビーファンドはマザーファンドの売買コストをベビーファンドの純資産残高に応じて負担。そのうえで、例えば、先進国株式型のマザーファンドに、組み入れ株式の売買回転率が高い機関投資家向けベビーファンドが投資している場合、そのファンドには解約費用の「信託財産留保額」を設定することで、ベビーファンド間の費用負担が少なく、公平になるように考慮している。
・株主優待はできる限り換金し、投信の資産に組み入れる。
運用報告書のデザインを刷新、見やすさを追求
ブロガーミーティングの冒頭では、交付運用報告書のデザインを今春に刷新したことを紹介。書体をユニバーサルデザインフォントで統一し、ページ構成や行間の調整、罫線のメリハリといった工夫を凝らすことで、見やすさを追求したという。重要事項が記載されているにもかかわらず、無味乾燥な見た目ゆえに、読まない投資家も少なくないとされる法定開示書類になじんでもらうのが目的で、同社の「顧客本位の業務運営」への取り組みの一例だ。
ただ、インデックス運用は運用資産規模の拡大に対応できるよう、現在自動化を進めているようだ。現場を見て感じた「人間くささ」は少しずつ薄れていくのかもしれない。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩、望月瑞希)