安倍晋三首相は1日、今春改定するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で、上場企業に女性取締役の起用を促す方針を表明した。日本経済新聞電子版によると、首相は同日の参院予算委員会で「上場企業に対し、女性の取締役を1人以上登用することを促す」と述べた。
今春改定するコーポレートガバナンス・コードでは、こうした方針を明記したうえで、取締役会に女性がいない企業には、投資家に対して理由を説明するように求めるとみられる。
QUICK FactSet Workstationによると、世界(日本含む)の上場企業5万社弱のうち、女性取締役が1人以上いる企業は約2万6000社と5割超を占めた。
日本は約3700社の上場企業のうち、女性取締役が1人以上いる企業は700社超の約2割にとどまる。社数は増加傾向にあるものの、主要7カ国(G7)の中では最低水準だ。
【G7の女性取締役が1人以上いる企業数の比率】
(注)データはQUICK FactSet Workstationより作成。G7を対象にデータ取得が可能な上場企業のうち、女性役員が1人以上いる企業数の割合を算出
QUICK FactSet Workstationで時価総額別にみると、世界(日本含む)では時価総額1兆円超の大企業の8割超が女性取締役の起用を進めており、なかでも米国は上場企業の9割超が女性取締役を1人以上起用していた。
公益事業を手掛けるアメリカン・ウォーター・ワークスやゼネラル・モーターズが女性取締役の起用に積極的だった。アップルは取締役8人に対して女性取締役が2人、グーグルの親会社にあたるアルファベットは取締役11人のうち2人が女性だった。
一方、日本は5割弱にとどまる。国内で時価総額トップのトヨタ自動車(7203)の取締役には現在は女性がいないが、日本経済新聞電子版によると、トヨタは社外取締役に三井住友銀行の女性常務執行役員を起用する方針という。
【時価総額別、女性取締役が1人以上いる企業の比率(%)】
(注)データはQUICK FactSet Workstationより作成。上場企業を時価総額別に分類し、総企業数に対して女性役員が1人以上いる企業数の割合を算出。世界のデータは日本含む
業種別で、日本が世界全体の水準を上回ったのは「エネルギー資源」のわずか1業種のみだった。今回の政府の措置は、こうした世界水準に見劣りする日本の状況を改善するねらいがあるとみられる。
【業種別、女性取締役が1人以上いる企業の比率(%)上位5業種】
(注)データはQUICK FactSet Workstationより作成。上場企業を業種別に分類し、業種別の総企業数に対して女性役員が1人以上いる企業数の割合を算出。業種分類はファクトセットの分類に基づく