激しさを増す米中の報復関税の応酬。米国が6日に中国の知的財産侵害に対して制裁関税を発動すると、中国は即座に対抗措置に出た。QUICKがまとめた7月の月次調査<株式>によると、注目する株価変動要因として「政治・外交」を挙げた人が回答者の38%に上り、2003年3月以来15年4カ月ぶりの高水準となった。また米中の通商問題は今年11月の米中間選挙まで続くとの回答が半数を占めた。調査期間は関税発動直前の7月3~5日。証券会社および機関投資家の株式担当者154人が回答した。
米国は6日、産業用ロボットや自動車、半導体など818品目、340億ドル(約3兆8千億円)相当の輸入品に25%の追加関税を課した。これに対して中国側は大豆を含む農産品や自動車など545品目、同額の追加関税を発動した。株式市場関係者へのアンケート調査では、回答者の約5割が米中の貿易摩擦は11月の米中間選挙まで続くとみている。短期間で収束すると回答した1割を合わせると、6割超がこの数カ月間は貿易摩擦問題に左右されやすい展開を見込む。
米中の貿易摩擦は好調な世界経済の足を引っ張りかねない。米中摩擦の影響について、回答者の5割弱は「一時的な景気減速を招く」と予想。次いで回答が多かったのは「影響は軽微」で2割強だった。米中貿易摩擦は秋まで続き、世界経済も一時的な減速が避けられない、というのが株式市場関係者のメインシナリオのようだ。
米国の関税引き上げはトランプ政権が事前に予告していたことから、市場では織り込み済みの面があった。9日の前場寄り付きの日経平均株価は続伸して始まり、心理的な節目の2万2000円を1週間ぶりに回復する場面もあった。日経平均の午前の終値は前週末比275円60銭(1.26%)高の2万2063円74銭だった。日経平均を対象としたオプション価格から算出し相場の変動率を映す日経平均ボラティリティ―・インデックス(VI)は低下。9日午前11時過ぎに前週末の終値より1.65ポイント(9.08%)低い16.52を付けた。
米中貿易摩擦で最も大きな影響を受ける株式市場として回答者が警戒しているのは中国。9日の寄り付きの上海総合指数は前週末比5.2181ポイント(0.2%)高の2752.4466だった。市場ではいったん悪材料出尽くし感が広がっているものの、トランプ政権はさらなる制裁関税を検討しているほか、本丸とされる自動車関税の引き上げの機会をうかがっている。目先のヤマ場は米国と日本が7月に予定する新たな貿易協議「FFR」になりそうだ。(QUICKナレッジコンテンツグループ)
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。