国内では需給ギャップが改善する一方、物価上昇率が伸びない状況が続いている。QUICKが18日にまとめた7月の短期経済観測調査(QUICK短観)によると、上場企業の半数以上が物価の上がりにくい要因に「消費者の根強いデフレ心理」を挙げた。
7月のQUICK短観は上場企業365社が回答。このうち304社が物価に関する特別質問に回答した。調査期間は7月3日~12日。
物価が上がりにくい最も大きな要因は何なのかーー。「消費者の根強いデフレ心理」との回答は56%を占めた。次いで「賃金の伸び悩み」が37%となり、この2つで9割以上に達した。政治の賃上げ号令にも関わらず、企業側は賃金の伸び悩みを「自覚」しているといえる。業績拡大が賃金上昇につながり、それが消費拡大と物価の上昇をもたらすという景況回復の理想のサイクルからは程遠い現状が浮かび上がる。
一方、「電子商取引(EC)の拡大」と答えた企業は4%にとどまる。物価上昇の頭を抑える一因になっているとの見方も出始めた、いわゆる「アマゾンエフェクト」はまだ、それほど影響力が大きくないようだ。また「人手不足を補う省力化投資」は3%にとどまった。さらに、2%の物価目標を掲げ金融緩和を続ける日銀に対して「金融緩和が不足している」とみているのはわずか1%だ。
6月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くベースで前年同月比0.7%の上昇と伸びは鈍い。7月のQUICK短観をみると、1年後のCPI上昇率の見通しは加重平均で前年比「0.8%」と前月の調査から0.1%低下。2年後の見通しは1.0%と、前月比で0.2%低下した。
QUICK短観の調査結果について、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「消費がさえず、企業が値上げしにくいなか、物価は日銀の考えとは逆に向かっている」と分析する。日銀は30~31日の金融政策決定会合で物価が上がりにくい背景を精査する見通しだ。
(QUICKナレッジ開発本部 永島奏子、大谷篤)