アマゾン・ドット・コムは米国西部時間の26日14時30分(日本時間27日6時30分)、2018年4~6月期(第2四半期)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationがまとめた4~6月期のアナリストの調整後1株利益(EPS)予想は48社の平均で2.47ドルと、前年同期比およそ6倍増が見込まれている。EC事業の安定的な伸びとともに米国で値上げを実施した有料会員サービス部門やクラウド事業のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の伸びに注目だ。
【4~6月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高 533億ドル(+40.6%) 会社予想510億ドル~540億ドル(中央値525億ドル)
・調整後EPS 2.47ドル (+6.17倍)
【事業別売上の市場予想】 (前年同期比)
Online Stores :279億5800万ドル (+17.7%)
Physical Stores : 43億0800万ドル (前年同期の開示なし)
Third-Party Seller services : 98億5400万ドル (+40.9%)
Subscription Services : 32億8800万ドル (+51.9%)
AWS : 60億1200万ドル (+46.6%)
*QUICK FactSet Workstationより作成
既存勢力をも駆逐する「アマゾンエフェクト」なる言葉も定着しつつあるEC事業は「Online Stores」に分類される。EC事業の売上高は前年同期比17.7%増の279億5800億円が見込まれている。
EC事業に比べて現状の規模は小さいものの、大きな伸びが見込まれるのは「Subscription Services」に分類される会員サービス部門の売り上げだ。同事業は「プライム会員」という有料会員の会費が売上高にあたる。18年1~3月期の同部門の売上高は前年同期比60%増の31億ドルに拡大した。同社は前回の決算発表時に米国「プライム会員」の年会費を99ドルから119ドルに約2割上げる強気の姿勢を打ち出した。
約1億人いるとされる有料会員の国別内訳は明らかになっていないが、多くが米国内の会員とされる。会員離れが無いと仮定すると5月の値上げの効果は年間20億ドル超との試算もあるだけに、会員数の伸びと値上げによる会員離れが起きていないかがひとつのポイントになる。
一方、部門別売上高で3番目に位置するクラウド事業「AWS」の伸びに対する期待は根強い。市場予想では前年同期比46.6%増の60億ドルの売り上げが見込まれている。クラウド事業はひとつのデータセンターを複数顧客で共有するため利益率が高いとされる。マイクロソフトの「Azure Cloud」やグーグルの「Google Cloud」といった競合もひしめき、熾烈なシェア争いとなっているなかでの売上高と利益率の伸びへの注目度は高い。
<過去20四半期決算分析>
EPS実績 対アナリスト予想
上振れ回数 13
下振れ回数 7
EPS実績/アナリスト予想(%)
平均乖離率 +64.5
平均上振れ率 +130.5
平均下振れ率 -58.0
決算発表直後1日の値動き
上昇回数 12
下落回数 8
平均騰落率 +1.5
平均上振率 +7.2
平均下振率 -7.2
※QUICK FACTSETの「サプライズ履歴」をもとに作成
アマゾンは積極投資を継続しているため、業績のブレが大きいのも特徴だ。過去20四半期分を比較すると、実績値が市場予想を上回る回数が13回に達する。平均上振れ率は130.5%という大きなかい離があるのも特徴だ。決算発表翌日には20回中12回上昇し、8回は下落した。平均騰落こそ+1.5%だが、平均上昇率は7.2%、平均下落率は7.2%と振れも大きい。
直近はアナリストの96%が買いまたはオーバーウェイトというレーティング評価としている。あるアナリストは直近の目標株価を足元の水準からやや低い1700ドルとしているものの、強気ケースでは2600ドルの道筋が見えてきたと指摘している。
米国や日本、欧州など世界でEC事業を展開し、小売業の業績を脅かす存在になりつつあるアマゾン。毎年7月に実施する特売りイベント「プライムデー」では直近、全世界で1億個以上の商品を売り、売り上げは過去最高を更新するなど話題に事欠かない。年を追うごとに成長し、日本円に換算した時価総額は100兆円規模に達する。さらなる成長の道筋を示すことができれば一段の評価につながる可能性がある一方、強気一辺倒の見方がくずれれば株価の下振れリスクも大きい。アマゾン包囲網もじわり強まる中、利益の拡大による成長ストーリーを提供できるか注目が集まる。(中山桂一)
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