アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が24日の大引け後、2018年7~9月期(3Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによれば、調整後の1株当たり利益(EPS)の市場予想の平均値(28社、20日時点)は前年同期比20%増の0.12ドルと見込まれている。半導体市況の悪化が見込まれる中、インテルの中央演算処理装置(CPU)の供給が不足していることが下支え要因となりそうだが、市場の懸念を払拭する成長性が示されるかが重要となりそうだ。
【7~9月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高(営業収益) 17億200万ドル(+3.5%)
・EPS(1株利益) 0.12ドル(+20%、Non-GAAP)
AMDの業績をけん引してきたのは、仮想通貨のマイニングに優れる画像処理半導体(GPU)の「ラデオン」を含むコンピューティング&グラフィックス部門(C&G)である。3QのC&G部門の売上高のコンセンサスは前年同期比28.2%増の10億5000万ドル。前年同期では大幅な増収だが、C&Gは2018年1~3月期(1Q)にピークを付け、2四半期連続で減収が見込まれている。ビットコインに代表される仮想通貨が今年は低迷しており、マイニング需要に対する期待値が低いのが現状だ。
AMDに強気な調査会社カウエン&カンパニーは17日付のリポートで、投資判断のアウトパフォームと目標株価の33ドルを維持した。その中では「インテルの14ナノメートル製品の供給不足を受け、パソコン市場の一部でAMDが恩恵を受けると考えている」としながら、「CPUの主力製品であるライゼンの中でも、GPUを統合した『ライゼン・モバイル』が好調とみられるため、低・中価格のGPU市場、仮想通貨のマイニング需要の鈍化という逆風を相殺するのに充分と考えられる」と指摘。特にインテルの供給不足の影響については「短期的な株高要因だけでなく、長期的にAMDのチャンスを広げる可能性がある」と見込んだ。インテルの顧客の半導体需要を取り込みつつ、2020年に向けてPC、GPU、サーバ向けCPUの「EPYC」、ゲーム用GPUなど製品全体で一貫したロードマップを実行できれば、高い粗利益目標を上回ることができるだろうと今後の成長に強気の見方を示した。
【AMDのセグメント別売上高の推移】
(注)QUICK FactSet Workstationより作成
一方、弱気派のゴールドマン・サックスは18日付のリポートで、目標株価を21→27ドルに引き上げたが投資判断はニュートラルを維持した。同社が半導体業界を調査した結果や最近のインテルの見解を踏まえ、インテルのCPU不足の影響を考慮。好調なCPUとは対照的に「GPUの売上高は2019年1~3月期(1Q)まで35%減少すると見込まれる」と予想した。その主因として、GPUのライバルであるエヌビディアが新製品をこれから発表する可能性を挙げ、「エヌビディアがGPUの『GeForce』の高価格製品である2070/2080/2080Tiを導入したが、まだ中低価格帯の製品が出ていないことに注意」と指摘した。エヌビディアの新製品が出ると、AMDのシェアは数四半期は低下する恐れがあるという。
AMDは19日に11.11%安で急落した。ニューストリート・リサーチが19日付のリポートで投資判断を売り、目標株価を18ドルとしたことが嫌気された。ニューストリートは「AMDはインテルの代替役にはなれない」などとし、近年の好調な業績が曲がり角を迎えたと厳しい見方を示していた。
AMDの株価は足元で下げ基調にあるが、年初来で2.08倍の上昇を記録している。4月に10ドルを割った後は好業績を背景に急伸し、9月には34.14ドルまで上昇して年初来で3倍の急騰を果たした。4月末時点で21%だった空売り比率も9月末時点では14%に縮小し、売り方の買い戻しが進んだことが株高の一因とみられている。AMDは2015年4Q決算以降、11四半期連続でEPSが市場予想を上回る「ポジティブ・サプライズ」の常連で、インテル要因以外で成長性を示せるのかが重要となりそう。決算発表を前に急騰後の調整が進んだため、サプライズがあれば見直し買いが入る可能性も否定はできない。(片平正ニ)
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