【QUICK Money World 辰巳 華世】何かと話題のエヌビディア。ニュースやネットで一度は目にしたことのある名前だと思います。でも、実は詳しくは知らない人が多いかもしれません。そこで、今回は「エヌビディアって一体何なの?」という疑問にお答えする形でエヌビディアを紹介します。
エヌビディアとは、米株式市場に上場する半導体最大手の企業です。ここ数年の世界の株式相場のけん引役は半導体株であり、その先頭を走るのが今回紹介するエヌビディアです。半導体が世界的にブームになったきっかけは、2022年11月に米OpenAI(オープンAI)が公開した対話型生成AI(人工知能)の「Chat GPT(チャットGPT)」の登場です。
生成AIでは、大量のデータを処理していく半導体が必要になります。エヌビディアはこのAI半導体に強みを持っている企業で大きな注目を集めています。どれくらい注目されているかというと、2024年6月にエヌビディアの時価総額は一時、マイクロソフトやアップルを抜いて首位となりました。世界で一番大きな企業となったエヌビディアは、下落する時のインパクトも半端じゃありません。9月3日の米株式市場では、エヌビディア株が急落し、時価総額が約2830億ドル、日本円にして約41兆1000億円減少しました。これは、イメージでいうならばトヨタ自動車(7203)の時価総額が丸ごと一日にして消えた形になります。
ざっと説明をしただけで、エヌビディアがどれくらいすごい企業で注目されているのかが分かると思います。それでは、あらためて詳しく見ていきましょう。
エヌビディアの事業内容
エヌビディアは、生成AIに必要な半導体の設計や製造する米国の半導体企業です。創業者のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は、台湾出身の技術者で仲間とともに1993年にエヌビディアを設立しました。本社は米国のカリフォルニア州サンタクララにあり、今では世界中に拠点を持っています。
AI半導体に強みを持ち、特に「GPU(画像処理半導体)」で有名です。GPUとはコンピュータのハードウェアの一部で、画像などの描画を高速で処理するのに優れています。もともとはゲームなどの映像を高速処理しなめらかに表示させるために設計されましたが、大量のデータを高速に並列処理する優れた能力の高さからAIに事例を覚えさせる段階で活用されるようになりました。その処理能力の高さから、AIデータセンターでも広く使われています。
ちなみにGPUに似た言葉でCPU(中央演算処理装置)があります。CPUは、コンピュータの頭脳と呼ばれています。皆さんがパソコンを買うときにCPUを気にすることがあると思います。CPUは、例えば、ワードやエクセルなどの実行やアプリケーションの動作など一般的なコンピュータ作業をする時に必要なものです。1つのタスクを処理する能力には優れていますが、大量のデータを並列処理するには不向きです。
エヌビディアが注目されている理由
エヌビディアが注目されている理由は、生成AIに欠かせないAI半導体を開発・製造しているからです。チャットGPTの登場をきっかけに、AIの進化が新たな段階に入り世界的なAI半導体ブームとなりました。生成AIを高度かつ高速に処理するのに必要となるのが高性能の半導体です。エヌビディアが開発・製造する画像処理半導体であるGPUの世界シェアは約8割ともいわれています。
生成AIの市場拡大に伴い、エヌビディアへの注目も高まり続けています。エヌビディアの決算は、半導体株を含め日米株の先行きを大きく左右することもあり常に注目されています。業績拡大を受け、株価は上昇を続けてきました。時価総額は同年6月18日に3兆3353億ドル(円換算で約527兆円)とマイクロソフトを抜いて一時首位になりました。株式市場で巨大テクノロジー企業GAFAからの主役交代を象徴する出来事と話題になりました。
ただ、エヌビディアが8月28日に発表した24年5~7月期決算に対する株価への反応はこれまでとは少し様子が異なりました。決算内容としては、売上高が前年同期比2.2倍の300億4000万ドル(約4兆3500億円)、純利益が2.7倍の165億9900万ドルでした。四半期ベースで過去最高を更新しました。あわせて発表した8~10月期の売上高見通しも325億ドル前後と市場予想(約317億ドル)を上回り、AI向け半導体の需要の高さを示したものとなりました。
決算は四半期で過去最高を更新したものの、市場では、高い利益率にピークアウトの兆しがあることで今後の業績の伸びが期待しにくいとの見方が広がり、株価下落につながりました。5~7月期の売上高総利益率は75.1%と2~4月期の78.4%から低下、8~10月期の見通しでは74.4%とさらに低下します。これまで高い期待感を背景に急騰してきた株価だけに、わずかな利益率低下でも市場では後ろ向きにとらえる傾向が強まりました。株価は過去の実績ではなく、未来を見て動いていることがよくわかります。
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エヌビディア株、今後どうなる? 将来性は?
エヌビディア株のこれまでの動きを確認してみましょう。下のチャートを見て分かるように、株価は23年以降に急騰しています。時価総額で世界首位となった24年6月までのたった1年半で約10倍になっていることが分かります。
会社側は以前から株式分割を繰り返し、個人投資家が買いやすい水準に株価を引き下げてきました。株価が約600ドルだった2021年5月、1対4の分割を発表。株価が1000ドルに乗せた2024年5月には、直前の決算発表時に1対10の分割を発表しました。これで人気が加速し、翌6月の時価総額世界首位につながりました。
しかし、8月28日に発表した24年5~7月期決算は好決算ではあったものの、今後の成長性鈍化の懸念から売りが広がりました。失望売りの広がりに加え、追い打ちをかけるように米ブルームバーグ通信が9月3日、「米司法省はエヌビディアが反トラスト法(独占禁止法)に違反した証拠を求め、同社や他社に文書提出命令状を送付した」と報じたことも重なり株価は急落。同日の米株式市場で、時価総額が約2830億ドル、日本円にして約41兆1000億円減少しました。
ただ、エヌビディアが報道について否定したことが伝わったこともあり、急落については、やや過剰反応だったとの見方も広がりました。加えて、ファンCEOが人工知能(AI)関連の需要の強さを改めて強調したこともあり株は買い戻されています。
では、株価は今後どうなるのでしょうか? 好材料も懸念材料も存在しています。6月に1株を10株に分割したので一口当たりの購入単価が下がり、個人投資家が買いやすくなりました。120ドル前後から投資が可能となっています。生成AI関連の市場は、今後拡大が続くと予想されています。チャットGPTが世に出てきてまだ2年足らずです。たった2年で生成AIが世に与えたインパクトの大きさを考えると、今後も生成AIを取り巻く環境は成長しながら変わる可能性を秘めています。
また、株価水準はまだそれほど割高ではないとも言えそうです。たった1年半で約10倍となった株価ですが、業績も急拡大しており予想株価収益率(PER)は41倍程度です。競合他社の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の44倍、米インテルの72倍と比較しても割高の水準とは言えません。
ただ、好材料だけでなく、過去の歴史を気にして先行きを懸念する向きもあります。インターネットが普及し始めた2000年頃、ルーターなどを販売していた米ネットワーク機器大手のシスコシステムズと境遇が似ていると指摘する声があります。当時、インターネットの普及は、今のチャットGPTの普及のように世の中に大きなインパクトを与える革新的なものでした。新しい産業への投資と人気を集めたシスコは、2000年3月に時価総額が米ゼネラル・エレクトリック(GE)を超え、米マイクロソフトに次いで2位となりました。ただ、その後、IT(情報技術)バブルが崩壊し、株価は暴落しました。現在のAI半導体ブームと重なる部分もあり、もしバブルであればいつか崩壊する懸念もあります。また折しも、シスコの株価最高値は分割直後だったこともあり、6月に分割し時価総額1位となったエヌビディアを連想する向きもあります。
エヌビディアの関連銘柄をチェック!
生成AIなど半導体に関連する主な銘柄を紹介します。
半導体製造装置で国内首位、世界4位の東京エレクトロン(8035)、半導体検査装置(テスタ)で世界最大手となるアドバンテスト(6857)、半導体商社のマクニカホールディングス(3132)、最先端ICパッケージ基板のイビデン(4062)などがあります。
この他にも半導体関連銘柄は多数あります。半導体の注目銘柄を確認するには、こちらをご覧ください。
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まとめ
エヌビディアは、米株式市場に上場する半導体最大手の企業です。ここ数年の世界の株式相場のけん引役は半導体株であり、その先頭を走るのがエヌビディアです。エヌビディアの動向は、半導体含め日米の株式市場に大きな影響を与えます。エヌビディアの動きに注目しましょう。
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