インテュイティブサージカル(ISRG)が18日の大引け後、2019年1~3月期(1Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによれば、調整後の1株当たり利益(EPS)の市場予想の平均値(15社、15日時点)は前年同期比10.6%増の2.70ドルと見込まれている。株価は決算に先立って6カ月ぶりに上場来の高値を更新しており、2四半期ぶりのポジティブ・サプライズで出尽くし感を払拭する展開が待たれる。
【2019年1~3月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高 9億7300万ドル (+15.0%)
・EPS(1株利益) 2.70ドル (+10.6%、Non-GAAP)
・ダ・ヴィンチ・サージカルシステム 219台(+18.3%)
インテュイティブサージカルはロボット支援による低侵襲手術「ダ・ヴィンチ・サージカルシステム」を手掛ける医療機器メーカーである。従来は遠い戦地での治療を行うために開発された軍事用の遠隔手術装置だったが、ロボットアーム技術などの進歩によって患者の負担を減らす低侵襲手術として民間で発展。2000年にロボット支援手術システムとして米食品医薬品局(FDA)の認可を得た。
胸腔鏡手術、心臓手術のほか、小児外科など多岐に活躍の場を拡大し、2014年から日本でも直接販売されて2018年4月からは国内での手術が保険適用となった。手術の際に大きく開腹する必要がないため、術後の回復も早く、感染症に罹りづらいメリットもある。
ISRGは先進技術を活かした手術システムを持つわけだが、ジョンソン&ジョンソン傘下で手術用医療機器を手掛けるエチコンが今年2月、手術用ロボットを手掛けるオーリス・ヘルスを34億ドルで買収すると発表。昨年にはライバル機の手術支援ロボットシステム「Versius」を手掛けるCMRサージカルとフロリダ州の病院がVersiusの訓練プログラムを始めた経緯もあり、手術ロボット業界内で競争が激しくなりつつある。
それでもISRGの株価は足元で強く、4月に入り、2018年10月1日に記録した上場来高値を6カ月ぶりに更新した。12日には589.32ドルまで上昇して600ドルの大台を試す展開となっている。QUICK FactSet WorkstationによればISRGをカバーしているアナリスト(20名)の目標株価の平均値は593.77ドルとなっており、足元の株価はアナリストの目標株価の平均に迫っている。最も高い目標株価を設定しているのはSVB Leerinkの650ドル(11日付)だ。
強気派の一角のドイチェ・バンク・リサーチは1日付のリポートで投資判断・買い、目標株価630ドルで新規カバレッジを開始した。リポートではまだ世界規模の外科手術市場が浸透していないため、技術革新による堅調な売上げ成長のための滑走路が残されているとしながら、「競合相手の手術ロボットの発売が迫っており、見逃すことはできないが、無数の重要な競争上の優位性を鑑みると市場のリーダーシップを維持することは可能だ」と指摘。「我々は世界で、安定的に10%台半ばで手術が増加すると見ており、最終的にISRGのビジネスモデル全体を推進することになるだろう」とも指摘した。米国でロボット手術が継続的に行われるとみられる一方、今後数年は日本と中国が成長ドライバーになるとも指摘した。
RBCキャピタルマーケッツは15日付のリポートで「最近のイベントで外科医達と話したところ、我々が今年予想する全世界でISRGが17%成長することを満足させるものだった」と指摘。フレキシブルカテーテルの「Ion」と、1つの穴から複数のロボットアームを入れて手術を行う「ダ・ヴィンチSP」に投資家が感心を寄せているなどと指摘していた。
なお、ISRGの決算時の反応を知るQUICK FactSet Workstationのサプライズ履歴を見ると、ISRGは2015年4~6月期(2Q)から2018年7~9月期(3Q)まで14四半期連続でEPSの実績が市場予想を上回るポジティブ・サプライズを記録していた。今年1月に2018年10~12月期(4Q)決算を発表した際には、決算に先立って売上高速報を出した経緯がある中でのネガティブ・サプライズとなったが、通常なら市場予想を上回る好決算を出す銘柄である。業績期待で既に株価は上場来の高値圏にあるものの、好材料出尽くしとならなければ株価は堅調な展開が続くとみられる。(片平正ニ)
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