【QUICK Market Eyes 根岸てるみ、丹下智博】ワクチン開発については先行き不透明な部分が多い中、金融・株式市場は経済の正常化を織り込む動きになっている。12月に入ってからの日本株市場では海運、非鉄、鉄鋼など景気敏感株が買われた。
■景気先行指標のダウ輸送株平均がじわじわ上昇
米国ではワクチン開発期待に早期の経済対策期待も加わり、12月4日のダウ工業株30種平均は過去最高値を更新した。そしてこのダウ平均を上回るペースで上昇するのが景気の先行指標とされる株価指数「ダウ輸送株平均」だ。同指数は4日、11月24日以来となる過去最高値(1万2742)を更新した。
9月以降は特に強さをみせている。指数構成銘柄のアラスカエアーグループとジェットブルーエアウェイズが9月から12月4日までにともに36%上昇、アメリカン航空は26%上昇するなど空運株の上昇が目立った。フェデックスも34%上げて指数の押し上げに寄与した。
ウォール・ストリート・ジャーナルの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」でマイク・バード氏は、今回の新型コロナウイルスによる景気低迷はこれまでとは異なると指摘。サービス業は製造業より大きく落ち込み、回復も相対的に遅れているという。
そして欧米の製造業は過去の労働集約型でなくなっており、雇用を大幅に増やさなくても生産を拡大させることが可能との見方を示す。
つまり労働市場が若干弱くても、ある程度の景気回復が進むということだろう。実際、10月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比24万5000人増と、市場予想(45万人増程)を大幅に下回ったが、米製造業の景況感を示す指数は悪くない。
■米製造業受注は市場予想を上回る、6カ月連続のプラス
4日に発表された10月の米製造業新規受注額は前月比1.0%増とQUICK FactSet Workstationによる市場予想(0.8%増)を上回った。6カ月連増のプラスで、コロナ危機前(2月)の水準には戻っていないものの、米製造業の堅調な回復が示唆された。設備投資が好調に伸びているようだ。
同時に発表された10月の米耐久財受注の確報値では、民間設備投資の先行指標とされる「航空機を除く非国防資本財」の受注額が速報値の0.7%増から0.8%増へと上方修正された。
好調な製造業にサービス業の雇用回復が加われば、景気回復のピッチが上がる可能性もある。それを期待してダウ輸送株平均が上昇しているようだ。