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テスラがS&P500に採用—買い需要は?指数の構成比は? 空売り筋にはダメージ

QUICK Market Eyes  片平正二】電気自動車(EV)大手のテスラが12月21日からS&P500指数に組み入れられるのに伴い、18日の大引け後にパッシブ投資家がテスラ株を買う指数イベントが発生する。今年最後の需給イベントとなりそうで、17日の米国市場でテスラ株は3日ぶりに大幅反発して5.31%高の655.90ドルで堅調に終えていた。指数組み入れ後のテスラの動向、指数への影響に関心が高い。

■米主力株、セクター構成比に影響

ソシエテ・ジェネラルは14日付のリポートで「テスラは浮動株比率80%でS&P500に追加される。潜在的な買い需要は570億ドル(9340万株)だ」と指摘。S&P500指数で1.501%のウエイトを占めるテスラが加わることでアップル(49億ドル)、マイクロソフト(30億ドル)、アマゾン・ドットコム(20億ドル)といった主力株に売り需要が出ると見込んでいた。

クレディ・スイスは17日付のリポートで「テスラは一般消費財でアマゾンに次ぐ2番目に大きいウエイトとなり、一般消費財のウエイトが11.1→12.6%に高まる」と指摘。自動車産業のウエイトもテスラによって3.8→15.8%に高まるとし、セクターの構成比に与える影響に注目していた。

■反動に警戒も

QUICK FactSet Workstationによれば、テスラの空売り残高は11月末時点で6.13%(4649万株)となっている。1月末の16.01%から半減したものの、株高が続いている割に高い比率にある。調査会社S3パートナーズのイーホリ・ドゥサニウスキー氏は17日にツイッターで「テスラの空売りポジションは年初来で375億ドルの損失を抱えている」と指摘。空売り投資家の損失が積み上がる中、指数イベントに伴う買い需要で空売り投資家の損失が膨らむとみていた。指数イベントに絡んだプレポジショニングの買いの巻き戻しが予想される反面、売り方の巻き戻しによる買いが入ればテスラ株が急騰する可能性もありそうだ。

※テスラの週足チャートと空売り残高

バーンスタインは11日付のリポートで「11月16日にテスラのS&P500採用が発表されたが、アクティブマネジャーは株式ポジションを構築せざるを得なくなる可能性が高いが、そのほとんどはテスラの組み入れ日である21日までに行われると考えられる」と指摘。収益チャンスとみたアクティブ投資家の買いが既に入ったと仮定しつつ、12月21日の組み入れとなる23営業日の間に巻き戻しが起こると予想した。

その一方で、パッシブ投資家に関しては、S&P500指数が浮動株調整加重指数であることを考えると、「調達した資金よりも(テスラの急騰を受けて)追加投資の額が大きくなるだろう」とみていた。その上でテスラ株に投資する投資家向けのインプリケーションとしては、S&P500採用後に上昇余地が限られる一方、1月初に発表される見込みの20年10~12月期(4Q)のEV販売台数は期待できないため、21日以降に短期的な利益を得ることを推奨すると指摘した。

テスラは17日に658.82ドルまで上昇して9日に付けた分割後の上場来高値を6営業日ぶりに更新した。指数イベント前日も強い展開となっていたが、その反動が警戒されそうだ。

■指数への影響

需給面では激しい展開が予想される一方、ゴールドマン・サックスは16日付のリポートで指数のバリュエーションへの影響を解説した。リポートでは「テスラがS&P500指数に加わると株価収益率(PER)は0.4ポイント上昇するが、これはほとんどの投資家が予想するより遙かに低い」と指摘。2021年の予想PERが170倍、時価総額6000億ドルのテスラが加われば指数ベースのバリュエーションが割高になると思われたものの、「S&P500のPERは通常、構成銘柄の時価総額を構成銘柄の総収益で割って算出される。どちらの指標も、S&Pによって決定された株式の変動に比例して各企業について調整される。この計算は収益が比率の分母であるため、数学的には時価総額加重平均ではなく、構成PERの収益加重平均に相当する」といい、その結果、「テスラは時価総額の1.5%を占めるが、2021年のコンセンサスに基づくと同社の利益はS&P500全体の0.2%にすぎない」というのだ。

またS&P500指数の1.5%のウエイトを持つテスラがS&P500に加わることでS&P500の1株当たり利益(EPS)、1株あたり配当金など、その他の1株当たり指標は約1%減少するという。その結果、S&P500指数の2021年の予想EPSは169→167ドルになるはずで、ゴールドマンのトップダウン予想(175ドル)と比べて差が大きくなるとのこと。

またインデックスのパフォーマンスへの影響としては「テスラは今年657%上昇したが、年間を通じて構成銘柄となっていればS&P500は200bpのアウトパフォームとなり、年初来で16→18%の上昇率を記録しただろう」と指摘した。これまではモメンタム株、グロース株の代表格として関心が高かったテスラだが、著名金融ブログのゼロヘッジによれば恐怖指数のVIXに与える影響は0.25ポイントとの試算もあるという。米株のベンチマークであるS&P500指数のバリュエーションに大きく影響がなければ割高感が強まる恐れは低そうだが、ボラティリティが上昇するようなことになれば相対的に低ボラティリティの日本株は間接的に恩恵を受けるかも知れない。

著者名

QUICK Market Eyes 片平 正二


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