日経QUICKニュース(NQN)=川上宗馬
世界的な長期金利の上昇(債券価格は下落)が鮮明になってきた。米中の貿易協議への進展期待を背景に、相対的に安全な資産とされる債券から資金を移す動きが広がり、日本の長期金利は8日、ほぼ半年ぶりの高水準を付けた。長らくマイナスで推移している長期金利だが、プラス圏への浮上も視野に入るとの声が聞こえ始めた。
■2019年初からの東証REIT指数と10年物国債利回り
米中が双方に発動している追加関税を段階的に撤回する方針で一致したと中国商務省が7日に発表したのをきっかけに欧米市場で国債に売り圧力が高まった。米長期金利は7日に8月1日以来の水準まで上昇し、フランスの長期金利は7月以来となるプラス圏に浮上した。
日本の10年債利回りは現時点で今週(5~8日)に入り0.125%上昇している。このままいけば週間の上昇幅としては2013年5月上旬以来ほぼ6年半ぶりの「珍事」となる。日銀による長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)導入以降で最大だ。
敏感に反応したのが不動産投資信託(REIT)だ。8日の東京市場でREITの総合的な値動きを示す東証REIT指数は大幅に反落。終値は前日比57.61ポイント(2.58%)安の2175.11と、10月2日以来およそ1カ月ぶりの安値を付けた。下落率は2018年2月6日(3.56%)以来、1年9カ月ぶりの大きさだ。
日米の長期金利が大幅に上昇し、債券と比べたREITの投資妙味が薄れるとの見方から利益確定売りを促した。東証REIT指数は今月5日に2257.08と2007年7月以来およそ12年4カ月ぶりの水準に上昇し、高値警戒感が強まっていた。
海外勢や地銀など国内勢が売りに回ったとみられる。市場では「景気後退の懸念が薄れるなどして金利の上昇基調が続いた場合、東証REIT指数は来年3月までに2100程度まで下げる余地がある」(国内証券の担当アナリスト)との声があった。
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