日経QUICKニュース(NQN)=矢内純一、イラスト=たださやか
債券市場で日銀への関心が低下している。QUICKが2日まとめた11月の月次調査<債券>では、最も注目している市場のプレーヤーは誰かとの質問で日銀と答えた比率が、4年ぶりの低さとなった。日銀が強調してきた将来的な利下げの可能性に対し、現実味が乏しいと受け止める参加者が増えつつあるのが背景だ。
調査期間は11月26~28日で、証券会社や銀行などの債券関係者134人が回答した。毎月「最も注目している投資主体はどこか」と質問しており、11月は「政府・日銀のオペレーション」と答えた比率が前月を20ポイント下回る48%に低下した。2015年8月以来4年3カ月ぶりの低さで、日銀が長短金利操作(イールドカーブコントロール=YCC)を導入した16年9月以降では最低となった。
さらに日銀が債券価格に与えるインパクトの指数は50.4と、18年11月以来1年ぶりの水準に低下した。インパクト指数は100に近づくほど債券価格の上昇(金利の低下)期待が強いことを意味する。つまり、インパクトが50という日銀の振る舞いは金利の上下にほぼ無関係というわけだ。
債券相場を動かす要因をみると、「短期金利/金融政策」との回答が22ポイント低下の29%と6カ月ぶりの低さとなり、「海外金利」(41%)と逆転した。
追加緩和観測は度々、市場で浮上してきたが、日銀は政策の現状維持を続けている。2020年を見通しても「政策の変更はないだろう」(みずほ証券の松崎涼祐マーケットアナリスト)との声が増えており、「動かない日銀」に市場参加者の関心が低下している。
関心はむしろ生損保や海外勢
代わりに関心が高まるのは生損保や海外勢の動きだ。最も注目する投資主体の質問で「生損保(年金除く)」は13ポイント上昇の19%となり、YCC導入後では最高になった。「外国人」も9ポイント上昇の28%まで高まった。
10月の公社債について投資家別売買動向をみると、生損保の超長期債の買越額は今年度最大となった。「金利が上昇したところで一定の需要が確認できた」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジスト)という。運用環境の悪化に日銀が気を配っても、生損保の買いが利回り上昇を阻む皮肉な状況となっている。
9月以降、長期金利の上昇基調が続いている。だが「海外勢の売りが一服してきた」(国内証券のストラテジスト)との指摘もある。日銀の政策変更が見込み薄となるにつれ、市場参加者は生損保や海外勢の一挙手一投足に視線を向け始めたようだ。
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