QUICKコメントチーム=松下隆介
株式市場の外はクリスマス一色で、これが終わると一気に正月モードに突入する。だが気を抜いてはいけない。今週は、相場の方向性を決める可能性がある重要な経済指標が控えている。その1つが、日本政策金融公庫が26日に発表する予定の中小企業景況調査。3大都市圏の取引先を対象にした調査で売り上げや雇用、仕入れなどさまざまな項目について聞き取り、結果をDIで公表している。
11月の調査では、1月までの向こう3カ月の売り上げ見通しDIが前月比3ポイント低下のマイナス13.8と、7年ぶりの低水準に沈んだ。14年4月の消費増税時は4月のみマイナスで5月はプラス圏に戻っていた。「海外経済の不透明感は低下しているため、12月も明確な回復がなければ、改めて消費増税後の需要の回復の弱さが意識される」(ドイツ証券)という。
中小企業の「体温」を測る指標はもう1つある。27日に日本商工会議所が公表する「LOBO調査(早期景気観測調査)」だ。対象は全国の商工会議所会員で、11月の業況DI(全産業合計)はマイナス26.8と3年2カ月ぶりの低さだった。消費増税、深刻な人手不足による受注機会の損失、原材料費の価格転嫁の遅れなどへの懸念が根強いといい、12月分も注視すべきだろう。
株式市場にとって無視できないのは、この2つのDIが株価と同じトレンドを描くためだ。大企業から部品を受注したり、規模が小さく街角景気にビビットに反応しやすかったりするのが理由とみられる。ただ、夏場以降は過去20年続いた連動が完全に崩れ、逆相関の状態にある。12月分のDIが改善して株高を追認すればよいが、結果次第では「間違っているのは株価」となりかねない。
ことしも残り1週間あまり。発射台が低かったせいか、ネガティブな話題が多かったにもかかわらず株価指数は18年末比で2割近く上昇と、まずまずの1年だった。多くのストラテジストは当然、来年の一段高を見込む。ただ、日本経済を下支えする中小企業の景況感の悪化は気になるところではある。
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