日経QUICKニュース(NQN)=三好理穂
2019年の公募投資信託は24年ぶりの資金流出超になる見込みだ。QUICK資産運用研究所によれば、設定額から解約額を差し引いた資金流出入額は12月20日時点で8005億円のマイナス(ETFを除く)。残る1週間ほどで大規模な資金流入がない限り1995年以来の流出超となり、投信の銀行窓口販売が解禁された98年以降では初めてとなる。株式相場の上昇に伴う利益確定売りが膨らんだのに加え、中長期では投資家の高齢化が影響しているとの見方が多い。
95年は1ドル=80円を超える円高・ドル安で投資環境が冷え込み約7700億円の流出超となった。流入超の状況を定着させたのが98年で、投信の窓販解禁により広く普及した。「グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)」など毎月分配型投信の人気を追い風に2007年には約14兆3200億円の流入超となった。少額投資非課税制度(NISA)導入2年目の15年も、制度を追い風に約8兆4800億円の流入超だった。
19年の資金流出の大きな理由は株高による益出しだ。日経平均株価は12月に入り、約27年ぶり高値を付けた昨年10月以来となる2万4000円台を回復した。2018年は10月初旬をピークに相場が調整に向かったが、今年は逆に年末に向けて水準を切り上げてきた。「もともと11~12月は益出しで資金が流出しやすいこともあり、日々の資金流出がかなり大きくなっている」(楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリスト)という。
こうした短期の要因以外に構造的な問題も横たわる。「投資家の裾野が大きく広がらず、年齢層が上がっている」(SMBC信託銀行プレスティアの山口真弘シニアマーケットアナリスト)点だ。一般に高齢層になればなるほど資産相続や老後資金の確保などに向けて運用リスクを落とす動きが広がりやすい。第1次ベビーブームで人口が多い「団塊の世代」が70歳代に入り、運用余力が落ち始めている。
金融庁はフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を求めており、高齢者に対する不適切な金融商品の販売が問題となっている。金融機関側は、内規などで高齢層にリスク性資産を勧めにくくなっている事情もある。一方で若年の資産形成層には、投資に充てる余剰資金が潤沢でないため投資に距離を置く人も多い。
株高がさらに進む場合、20年は流出超の傾向が続く可能性がある。加えて投資家の高齢化という構造問題があり、「相場環境に関わらず中長期で厳しい状況が続く」との慎重な声もある。流入が中長期で拡大していくためには各金融機関が魅力あるサービスや商品の開発などで現役世代との距離を縮めることが必要になりそうだ。
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