QUICK Market Eyes=大野弘貴、片平正二
1日の日経平均株価は3日続落した。下げ幅は851円と相変わらず振幅の大きな地合いを見せつけた。この日の売り材料については「ロックダウン=都市封鎖」が覆っていたようだ。以下のような声が聞こえている。
「ロックダウン準備中でしょう。霞ヶ関では、上級職員の皆様の動きが怪しい」(銀行系証券)
「きょうは東証REIT指数の下げがキツイです。生保さん、信託系からの売りが目立ちます。期末もパラパラREIT売りは持ち込まれていたのですが、(戻りの鈍さを嫌気して)期初は売りスタートですね。首都圏の都市封鎖(ロックダウン)が警戒される状況下、弊社でも今後の対応をどうするか準備中です。バイサイドさんはテレワーク対応ができているところが多いようですが、目先は外出自粛ではございませんが、ロックダウンへの備えで運用自粛といったところもありそうでフローは少な目です。なお弊社ではテレワができませんので、トレーダーを2室に分散して、万が一の感染拡大の影響を抑えようとしています」(国内証券トレーダー)
「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が一服しない限り、ロックダウンありきの前提で売られてしまうんですね。きょうは円高があるにせよ、アジアの中で日本株の下げがキツイですね。日銀がETFを買ってくれているのは需給的に下支え材料になるでしょうけど、新型コロナの感染拡大でアク抜け感が出ないのが嫌ですね。厳しい新年度相場になってしまいましたね・・・。かといって気晴らしに、夜の繁華街に飲みに行くような状況じゃないですよ。まずは命あっての物種です。個人投資家も個別株の押し目に逆張りで行くような状況でなくなってます。コマツの決算延期のような動きが相次ぐようだと、さらにセンチメント悪化につながりそうです」(国内証券)
■ロックダウン、その時日経平均は…
JPモルガン証券は31日付のリポートで「仮に4月いっぱい首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)でロックダウンが実施された場合、2020年4~6月期の日本の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比年率マイナス17.0%に落ち込み、2020年通算でもマイナス4.4%の大幅マイナス成長になると推計している」と指摘した。ロックダウンがない場合の予想は同マイナス7.0%で、2倍超の落ち込みなるとみていた。
これを踏まえてTOPIXの1株当たり利益(EPS)を推計すると、ロックダウンが起こるシナリオで2020年度は前年度比マイナス20%の797、2021年度は同37.6%増の108.0になるという。ロックダウンが4月に留まらず5月以降にずれ込む場合には、下方修正幅はより大きくなるとも指摘した。
ただ株式相場の見通しについては、「年初来安値を更新するような大幅調整のリスクは小さい」とも指摘。ロックダウンが実施されるだけでも企業業績には相応の悪影響が出るほか、海外投資家の間では日本の状況が悪化しているとの認識が一層強まるきっかけともなり得るとしつつ、「年初来安値を更新する様な大幅なものとなるリスクは小さいと考えられる」と指摘した。
その理由として①東証一部上場企業の売上は半分近くが海外で、国内個人消費が落ち込んだ場合の影響は未上場の中小企業で大きく、大企業では相対的に小さいこと、②株式市場の焦点は目先の収益動向より、新型コロナの蔓延に歯止めがかかるタイミング、事態が収束するまでの間に金融危機が起こるリスク、ウイルスの蔓延に歯止めがかかった後の経済・企業業績回復の速度と確度に移っていると見られる。ロックダウンによって事態の悪化が食い止められ、ワーストシナリオが回避されるとの見方につながれば、むしろポジティブに捉える向きがあってもおかしくない――などと指摘した。これらを踏まえ、仮に首都圏のロックダウンが実施されても「日本株の調整余地は日経平均株価で1万7000円をやや下回る程度までで、年初来安値(1万6522円83銭)を下回るリスクは小さいと考えられる」とみていた。
■国内GDP11%押し下げも
直近で4~6月期のGDP成長率予想をマイナス34%に下方修正した。ゴールドマン・サックス。31日付リポートで「東京都でロックダウンが1カ月適用され、需要が加重平均ベースで40%失われるとの前提の下でシミュレーションした結果、付加価値誘発効果はマイナス3.8兆円となり、東京都・全国の年間GDPのそれぞれ2.6%、0.7%程度が失われることになる」との試算結果を示した。また、ロックダウンの影響が「波及効果も含めて全て当該四半期中に現れると仮定すると、全国GDP成長率(前期比年率換算)に11%ポイント近い下押し圧力を与える」とも示されている。この場合、東京都と全国の失業率はそれぞれ5.3%、2.9%へ上昇するという。さらに東京都だけでなく近隣の件でもロックダウンが同時に実施された場合、かつ持続期間が1カ月を超えるような場合では、「全国GDPに対する下押し圧力は20%ポイントを優に超える可能性も相応にある」との見方も示されている。
■経済損失は5.1兆円
また第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは3月30日付リポートで「東京都を封鎖して隣県等からの人に移動を禁止したならば、日本経済は頭に回っていく血流を止めるに等しいダメージが起こる」と指摘し、この場合の経済活動は通常時より約6割減少すると試算していた。4月1日から同月末の大型連休まで首都封鎖措置がとられた場合、「名目GDP(国内総生産)は5.1兆円ほど低下する」との試算結果を示した。さらに、外出禁止などの封鎖状態が神奈川県、千葉県、埼玉県を加えた南関東全体で実施された場合、「損失は8.9兆円にもなる」との見方も示されている。
試算前提では、平日の出勤状態が日曜日並みに抑えられると仮定されている。NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」(2015年)を引用し、熊野氏は「有職者の平日の出勤率が88%、日曜日が37%となっている。両者の差を求めると、日曜日は平日に比べて▲58.0%の稼働率低下となっている。東京都の2019年度の実質GDPが106.4 兆円だから、その1カ月分の▲58.0%が実額で▲5.1 兆円になる」としている。
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