NQNニューヨーク=岩本貴子
米原油先物相場がほぼ18年ぶりの安値圏に沈んでいる。経済活動の落ち込みによる需要減が警戒されている一方、主要産油国による価格競争が一段と厳しくなっているためだ。原油相場が主要産油国の生産コストまで下がる可能性もあり、一段安の見方は消えていない。
1日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月物は一時19.90ドルまで下げた。米株式市場と異なり、反発らしい反発局面もなく下げ相場が続いている。
■減る需要、積み上がる在庫
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、各国政府が不要不急の外出や事業活動を制限する動きが広がっている。JPモルガンは3月31日のリポートで、こうした動きが世界の原油需要を日量2600万バレル押し下げると試算した。米国の生産量の2.4倍に当たる規模だ。
中国は徐々に企業活動が戻りつつあるが「国内在庫がたまっており、原油輸入は急には増えない」(調査会社クリッパー・データ)。米原油在庫も膨らんでおり、米エネルギー情報局(EIA)の統計によると、3月27日時点で原油在庫は4億6920万バレルに達した。ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想を上回り、1年前に比べても4.4%増えた。
■産油国感の仁義なき戦い
原油安に拍車をかけているのが主要産油国による価格競争の激化だ。サウジアラビアは4月に大幅増産と値下げに踏み切る。ロシアも値下げで応じるもようだ。「仮にサウジとロシアが生産調整で合意するにしても、早くて6月だろう」(クリッパー・データ)との声もある。
バンク・オブ・アメリカは3月31日付リポートで「理論的には、短期的に原油価格がロシアやサウジの生産コストまで下がりうる」と指摘した。生産コストはロシアが12ドル、サウジが8ドルだ。世界の経済活動が回復する時期は当面見通せない。原油価格は一段の下落を想定しておいたほうがよさそうだ。