QUICK Market Eyes=片平正二、大野弘貴、川口究
2日、複数メディアでトランプ大統領が「サウジアラビアとロシアが1000万バレルの減産で近く合意する」との見通しを示した報じられ、減産期待からWTI原油先物が24.66%高で過去最高の上昇率を記録した。しかし、市場の疑心暗鬼は根強いまま。先行き不透明感を払しょくするには心もとない「リップサービス」にとどまる可能性もありそうだ。
■削減の可能性はまだ低い
今回の原油急騰について、モルガン・スタンレーは2日付のリポートで「トランプ大統領のツイートで、サウジアラビアとロシアが近く大幅な石油供給削減を発表すると示唆されたことを受けて、原油は大幅に上昇した。これに続いて、サウジアラビア国営通信社が『OPECプラスや他の国々のグループは、望ましいバランスを石油市場に取り戻すための公正な合意を目指している』として緊急会議開催を求める声明を出した。OPECなどからの供給削減が、今後数カ月の石油市場のバランスをある程度緩和することは間違いない。特に、大統領のツイートで言及されている1日あたり1000万バレル規模のものであれば緩和されるだろう。しかし、2つの理由から生産削減に戻る可能性はまだ低いようだ」と指摘した。
リポートではその理由として①原油相場は主に供給過剰でなく、新型コロナウイルス(COVID-19)による需要減が影響している。当社の予想では20年4~6月期(2Q)は日量1400万バレルの需要が減少するとみられる、②過去3年間のOPECプラスの合意は最終的に失敗に終わった。当社の見解では、サウジが減産への復帰を検討する前に米国を含むより大きな同盟国を必要とする可能性が非常に高い――などと指摘。また、ロイターがこの日の午後、米政府高官の発言として「トランプ氏は国内の石油生産者に具体的な削減に合意するよう求めるつもりはない」と伝えたことも踏まえ、「そのような大連が一緒にできるのか、懐疑的だ」とみていた。
■継続性とその期間こそ重要
CMCマーケッツ チーフ・マーケット・ストラテジスト、マイケル・マッカーシー氏も顧客向けのメモで「エネルギー平和協定のニュースは懐疑的に受け止められた」と指摘。その上で「WTI原油は当初35%上昇したが、クレムリンの広報担当者が合意は得られていないと述べたことを受け、下落した。このツイートはまた、期間を明示せずに1000万バレルの減産を行ったことを引き合いに出し、混乱を引き起こした。1日当たりの規模の削減は非常に重要だが、どれくらい継続されるかという期間に関連する情報もそれ相応に重要である」としていた。
■削減は遠い先か
またゴールドマン・サックスは2日付リポートで「前例のない供給削減の見出しは重要だが、そのような削減が実施されるかどうか、その効果的な規模や時期については、依然として非常に不確実である」と指摘。その後の様々な続報を受け「削減はまだ遠い先のことのように思われる」との見方を示した。
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