QUICK Market Eyes=川口究、大野弘貴
新型コロナウイルスの感染症拡大を懸念して大きく売り込まれた不動産投資信託(REIT)。東証REIT指数は底入れし戻り歩調にあるが、ここにきて懸念材料がまた1つ浮上してきた。日本政府による緊急事態宣言が与える影響について市場では以下の見方出ている。
■「商業REITとホテルREITの株価に及ぼす影響はネガティブ大」
コロナウイルスの感染爆発を防ぐため、政府が7日に東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令した。モルガン・スタンレーMUFG証券は7日付リポートで「緊急事態宣が商業J-REIT(不動産投資信託)とホテルREITの株価に及ぼす影響はネガティブ大」との見解を示しているようだ。個別銘柄では日本リテール(8953)とJHR(8985)がサブインダストリー内で相対的にネガティブという。
同証券による試算では7都府県が鑑定評価額に占める比率は、商業REITが65%、ホテルREITが50%であった。「対象となる7都府県においては、テナントから賃料が支払われない可能性もゼロでは無い」として、仮に売上高の構成比が同程度であり、これらの賃料収入が1カ月 支払われない場合、商業REITは5.4%、ホテルREITは4.2%程度の減収が見込まれるという。「J-REITの営業レバレッジが2.2倍程度とみられることを踏まえれば、EPU(一口当たりの当期純利益)への影響は商業REITが12%、ホテルREITは9%程度と看做すことができる」との見方を示した。
銘柄選択の観点からは、7都府県へのエクスポージャーは同証券試算で日本リテール(8953)が77%、JHR(8985)において58%であり、それぞれサブインダストリーの加重平均を上回っているという。
■「目先のJ-REITは米国REITとの連動性を一層高める可能性も」
赤羽一嘉国土交通相は3月31日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、テナントビル所有者に対し、入居する事業者からの賃料徴収猶予を検討するよう働き掛ける考えを明らかにしていた。4月2日にはイオンモール(8905)が入居テナントの賃料を一定期間減額すると発表。また7日には日本経済新聞は「不動産大手がビルなどに入居する店舗の賃料の支払い猶予の交渉を始めた」と報じた。
野村証券は7日付リポートで「7日の政府の緊急事態宣言発令を受けて今後経済活動が一層縮小するとの見方が強まれば、企業業績悪化を通じたオフィス市況変調への懸念も強まりかねない」と指摘。一方で、「7日時点のJ-REIT(日本の上場不動産投資信託)セクターの加重平均配当利回りは4.9%、NAV倍率(株価純資産倍率に相当)は0.84倍と比較的割安な水準にある」とも指摘した。
野村証券は「バリュエーションの割安感が台頭した結果、J-REITに対する投資機会をうかがう市場参加者もそれなりに存在する」との見方を示した上で、足元では日米REIT相場が高めであることに着目し、「3月にJ-REITのロスカット売りを余儀なくされたり評価損を抱えるに至った国内金融法人など、新年度に入って再び投資を模索するも今方針の熟考段階と考えられる。目先のJ-REIT相場は米国REIT相場との連動性を一層高める可能性もあろう」との見方を示した。