新型コロナウイルス問題が食品・家庭用品の販売動向に大きな影響を与えている。日本経済新聞社が日経POS情報の「食品・日用品」について3月のデータを分析したところ、食品では缶詰やめん類、日用品では介護・衛生用品や紙製品の販売が前年同月比で急増したことが分かった。これまで一部の食品・日用品では「買い占め」「パニック」等による販売増が騒がれていたが、ビッグデータの分析により裏付けられたと言える。アナリストからは、3月の販売動向が一時的な動きに留まらない可能性を指摘する声もある。
日経POS情報は、日本経済新聞社が全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどから販売実績データを収集しているデータ分析サービス。今回の分析では、2月27日の全国一斉休校要請発表を起点にした消費者動向がわかる(詳細なレポートのダウンロードはこちら)。
■「コロナ後」に「缶詰」は40%増、「介護・衛生用品」は2.3倍
食品分野について、前年同月比の上昇率ランキング(上位5分類)を見ると、「缶詰」の40%増のほか、やパスタ等の「めん類」が伸びた。
日用品では、除菌用ウェットティッシュの不足により「介護・衛生用品」が2.3倍、トイレットペーパーや箱入りティッシュの買い占めが起きたことから「日用紙製品」が55%と大きく伸びた。
代表的な個別企業を見ると、冷凍惣菜や乾燥パスタの日本製粉(2001)、製紙会社の大王製紙(3880)は以下のような動向となっている。
■「コロナ後」に販売が急増した企業は株価も堅調、持続性は…
食品、日用品の上位5分類の数表に掲載された主な上場企業それぞれ10社をインデックス化し、日経平均株価と比較したグラフが以下となる(青:日経平均、赤:食品、緑:日用品)。関連企業の株価は日経平均に比べて底型い推移をしており、株式市場が需要増加に反応していたことがわかる。
株式市場の注目点は、食品や日用品の需要増加が一時的な「パニック」消費か、それとも中長期的に持続するかどうかだ。4月7日には緊急事態宣言が出され、今後も一定期間、強い需要は続く可能性はある。
ある国内証券のアナリストは「保存食の需要増加分には家庭内在庫の積み増し分も含まれており、在庫積み増し分は数週間中に解消される」と指摘する。一方、第一生命経済研究所の藤代宏一・主任エコノミスト は「パニック買いもあったと考えられるが、食品関係については、外食をやめて自炊という広義の実需増大の可能性がある。家庭料理において消費量の多い、酢・みりん・醤油など、調味料の需要増加が伴うようであれば、自炊関連消費はある程度継続するかもしれない」と、消費構造の中長期的な変化の可能性をみていた。
日経POS情報についての説明と、詳細レポートは以下を参照。レポートでは、さらに下位のランキングや他の企業のデータも確認できる。