QUICK Market Eyes=片平正二
20日午前の東京株式市場で日経平均株価は181円安で引けた。新型コロナウイルスの影響が依然として見極めきれず一進一退の状況が続く。一方で経済対策と感染者数の動向から次の一手に対しそろそろ頭の体操をしてもいい局面かもしれない。
■給付金の行方は?
政府が新型コロナの感染拡大を受けて7日に緊急事態宣言を発令し、16日には対象を全国に広げた。当初は所得制限が付いた30万円の給付金が出る予定だったが、与党公明党の意向を受けて急遽、所得制限なしで1人10万円のバラマキ策が5月にも実施される見込みである。給付金を巡っては自民党の岸田文雄政務調査会長に花を持たせる形となっていたが、ここにきて公明党、それに近いとされる二階俊博幹事長の影響力が増す形となっている。今後の補正予算を巡る国会審議などもあるため、安倍政権の内閣支持率の変化が気になるところ。
従来よりもいわゆる真水(財政)の規模が増えることで効果が期待される反面、単なる現金支給となることで貯蓄に回る分が多くなれば消費刺激効果が減る可能性がある。ただでさえ、5月6日までとされている緊急事態宣言の解除時期には先行き不透明感があり、家計が不安感を強めれば貯蓄率が高くなることも想定される。
■陽性者数の動向は?
その政府の緊急事態宣言の動向を占う上で、東京都の陽性患者数の動向が注目される。17日には初めて200人を突破し、19日は107人でやや鈍化したものの、7日移動平均は150人程度で高止まりの状態にある。
野村証券は17日付のリポートで「外出自粛と新型コロナウイルス陽性率の関係」を分析した。それによれば、同社はこれまで携帯電話の位置情報データを用いて人々の活動状況の観測を行ってきたが、3月に入ると全国的に外出自粛の傾向が見られ、多くの地域においては、その後も外出を控える傾向が見られているという。その一方、3月25日の東京都の外出自粛要請以降、そのような動きは収まりつつあるものの、「各地で散見されたこのような外出自粛の緩みは、新型コロナの感染拡大にどのような影響を与えたのだろうか」として、PCR検査の実施人数と陽性者数の累計値について、前週の同じ曜日との変化を分析した。その結果、陽性者数の増加は3月中旬ごろまで減速していたが、3月末ごろから加速しており、検査実施人数の伸びを超えるペースで陽性者数が増えていることが確認できるという。
特に4月に入ってからは、陽性者数の伸びは100%に近い水準といい、「感染者数が1週間で2倍程度になっていることがうかがえよう。一方で前述したように、来街者数は、3月の2週目ごろまで減少度合いを増したものの、その後、4週目にかけて徐々に減少度合いが減り、3月末から再び大幅に減少している。実際の感染が十分統計値に反映されるまで2週間前後かかることを考慮すると、4月の陽性者数増加の加速は、3月中旬以降の外出自粛の緩みと整合的と言えよう」と指摘。「3月末以降は東京を中心として再び来街者数の減少幅が大きくなっており、4月7日に緊急事態宣言が発出されたことも踏まえると、陽性者数の伸びは現状が一つのピークである可能性があるだろう」とし、政府の緊急事態宣言の発令を受け、タイムラグを経て陽性者が鈍化するとみていた。
■ネットショート状態
米市場では先物の建玉にも注意を払いたいところ。米商品先物取引委員会(CFTC)が17日に公表した投機筋のEmini-S&P500株価指数先物のポジションでショートが4週連続で拡大し、14日時点で21万枚を超えるネットショート状態となった(図1)。新型コロナの感染拡大で商品投資顧問業者(CTA)などの株先売りが拡大した可能性がうかがえるが、その後の相場の戻りを踏まえるとショートカバーが急速に入った可能性がありそう。VIX先物や円先物には目立った変化がなく、決算シーズンが本格化する米国市場でショートカバーがさらに進むようなら日本株の下支え要因となりそう。
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