QUICK Market Eyes=根岸てるみ
国内企業の業績悪化が懸念されるなか、アナリストは医薬品セクターに対して強気に転じている。新型コロナウイルスの蔓延を受けて売上増への期待が背景にある。景気の先行きが見通せない中でディフェンシブ性の高さや、新型コロナの治療薬として米ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」がきょう7日に国内でも承認されると伝わるなど材料もある。
■医薬品セクターの業績見通しは右肩上がり
主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDI※は、4月末時点で金融を含む全産業ベースがマイナス57と、前月から14ポイント悪化。リーマン・ショックで業績不安が広がった2009年4月以来11年ぶりの水準に低下した。ただ、業種別のDIをみると、医薬品セクターがプラス6と全体の動きと逆相関した。武田薬品工業(4502)が一般用医薬品事業を約4000億円で売却することが主な押し上げ要因だが、そのほかの医薬品株にも上振れ期待が広がる。
3カ月前比でアナリストが今期純利益を上方した銘柄を修正率が大きかった順にランキングしたところ、上位10銘柄の半分が医薬品だった。中外製薬は新型コロナの治療薬の治験を進めるようで、ライオンはせっけんなど衛生品の売上増が見込まれている。
長期でみても医薬品セクターの業績見通しは2015年以降、右肩上がりで推移。アナリストは一貫して強気姿勢であることがうかがえる。
■「アビガン」も治療薬として候補に
米国はレムデシビルの使用を認可し、日本でも異例のスピードで承認されるようだが、供給量には限界がある。10月までに50万人分、年内では累計100万人分の供給にとどまる。中国は臨床試験で効果が得られなかったと報告している。このため、レムデシビルに加えて、富士フイルムホールディングス(4901)の子会社、富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ薬「アビガン」も治療薬として候補に挙がっている。
トランプ米大統領はフォックステレビのインタビューで年内のワクチン開発の可能性を示唆し、ジョンソン・エンド・ジョンソンを挙げたが、遺伝子医薬品開発アンジェス(4563、マザーズ)も開発を進める。ワクチンの実現を含めて、医薬品セクターが注目される局面は続きそうだ。
※QUICKコンセンサスDIとは
アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出する。DIがマイナスなら、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っていることを意味している。5社以上のアナリストが予想している銘柄が対象で、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかが分かる。
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