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景気に先行する株価上昇、落とし穴は?

記事公開日 2020/5/21 17:04 最終更新日 2020/6/2 12:10 QUICK短観 日経平均株価 自社株買い GDP 国内総生産 コロナ後 QUICK Market Eyes

QUICK Market Eyes=大野弘貴

足元の株価上昇と比較して、本格的な景気持ち直しには1年以上かかることが見込まれている。中には足元の株高には違和感を覚えつつも、景気回復を前提に投資行動を提案しているとの声も聞かれた。期待先行で買われている株価に落とし穴はないか。

■株式相場は戻しているが・・・

日経平均株価は20日終値までに4日続伸し、3月19日終値からの上昇率は24.4%に達した。また、同期間の東証マザーズ指数(154)の上昇率は63.1%にまで拡大した。東証マザーズ指数の年初来騰落率は1.39%高となった。東証マザーズ指数は一足先にV字回復を果たした。

※日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

※日経平均株価と東証マザーズ指数の推移

一方、経済のV字回復は見通しにくい状況となっている。米議会予算局(CBO)は19日改訂した2020~21年の経済見通しで、20年4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率を前期比年率換算37.7%減と予測。7~9月期には同21.5%増の大幅反発を見込んだが、経済の完全復元には1年半以上かかると見通した。

日本も同様に、経済回復までの道のりが長期間に及ぶことが予想されている。日本経済新聞が23人の民間エコノミストに見通しを聞いたところによると、20年4~6月期の実質GDP成長率は平均で前期比年率21.2%減となっていた。直近のGDPのピークである19年7~9月期の水準まで持ち直すのには「21年後半以降」との回答が最も早い結果となっていた。

■企業の景況感は悪化

コロナ以前の状況に戻るのに長期化が予想される中の株高に違和感を覚える声は多く聞かれる。

「率直な印象、これ以上株価が上がるとはとても信じられない。経済が悪化することはある意味織り込まれた状況と言っても過言ではない。それでも、2年先程度の経済が回復することを前提に、投資行動を提案している」(外資系証券)。

そんな中、日本企業の景況感も急速に落ち込んでいる。

QUICKが実施した5月の「QUICK短期経済観測調査(QUICK短観)」で、製造業の業況判断指数(DI)はマイナス33まで落ち込んだ。09年6月以来10年11カ月ぶりの水準となった。直近の株価反発とは対照的な動きとなっている。

※QUICK短観(製造業)と日銀短観(大企業・製造業)の推移

また、自社の株価水準について「安い」との回答数から「高い」との回答数を減じて算出する自社株判断DIは製造業で64と、前月から7ポイント低下した。

4月調査時は日経平均株価がおおよそ1万8000~2万円のレンジで推移していた。足元、2万円を超える水準では自社の株価水準を高いと答える企業数も増えてきそうだ。それでも、足元の株価水準では多くの企業が「自社の株価は安い」と回答している。

※自社株判断DIと日経平均株価の推移

※自社株判断DIと日経平均株価の推移

■「株価にポジティブなマネーフロー環境が続く」

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は19日付リポートで、「来期以降の業績回復や財政・金融政策のサポートがあればいずれもとの業績トレンドに復すると考え、押し目を拾うという見方もあるだろう。しかし、企業も業績予想を公表できない状態でEPS(1株利益)は低下傾向が続いており、慎重姿勢を維持している投資家も多い」と指摘。足元の株価上昇を支えている要因について、「当初公的部門の買い支えだったが、足元では株式への資金流入再開が株価を支えている」との見方を示した。

その上で、先行きについては「調整局面が生じる可能性も小さくないが、その際は公的部門による買い支えが期待できるため、『コロナ後』の世界に対する見方を根本的に覆すようなイベントがなければ、株価にポジティブなマネーフロー環境が続く」との見方も示されている。

三菱UFJ証はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の国内株ウエートは23%程度まで低下した状況にあり、依然株式の買い入れ余地が残っていると推計している。

■積極的な自社株買いは見込みにくい

「一般的に、株価は1年程度先を見て動くと考えている」(国内証券)との声が聞かれたが、足元の状況は2年程度先の、経済が回復した後の状況をも織り込みはじめ、株式市場に資金が流入している状況と言えそうだ。3月の大幅反発を演出し、センチメント改善に寄与したのは公的部門による買い入れによるものかもしれない。

ただ、日銀と共にこれまで相場の下支え役となってきた企業による自社株買いは、期待値が低い状況となっている。自社株判断DIでは企業自身の判断による株価水準は依然として安いと答える先が多かったものの、「先行き不透明感が強まる中、今後も自社株買いを控え、キャッシュを手元に確保する企業が増える」(国内ストラテジスト)との指摘が聞かれた。いくら企業が自社に対する株価水準が安いと見ているとはいえ、足元状況では積極的な自社株買いは見込みにくい。また、これ以上株価が上がる場面では、景況感悪化に比例して自社株の割安感後退に繋がりそうだ。

■訪日客数は99.9%減

20日、政府が21日に新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の対象から大阪、京都、兵庫の関西3府県を解除する方向と報じられた。

国内で経済再開に向けた動きが加速する一方、国際統計サイト、ワールドメータによる世界全体の新型コロナウイルスの感染者数は20日に500万人を突破した。アメリカや新興国での感染拡大が止まっていない。

日本政府観光局(JNTO)が20日発表した4月の訪日客数は前年同月比99.9%減の2900人だった。このまま、世界全体での感染拡大に歯止めがかからない様であれば、訪日外客数の大幅減少は一過性のものでなく恒常的なものとなる。

公的機関の買い入れが株価の底打ち基調を鮮明にし、加えて足元では、株式市場に対して徐々にではあるが投資家の資金流入が見られ始めた状況ではありそうだ。それでも、2年先の回復を期待を前借りして買われた株価は、景気回復への道のりが長期化することが鮮明になるにつれ、再び逆風にさらされる可能性もある。

 

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著者名

QUICK Market Eyes 大野 弘貴


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