金融庁は5月14日に開催した「つみップオンライン」の要旨を発表した。「つみップ」は積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)に関する意見交換会で、投信ブロガーや個人投資家と交流する場として金融庁が随時開催している。今回はコロナ禍を受けて初めてオンラインで開いた。
■つみたてNISA、口座数が順調に増加
パネリストとして参加したのは、経済評論家の山崎元氏と投信ブロガーの「虫とり小僧さん」、「吊られた男さん(つらおさん)」の3人。金融庁と山崎氏によるプレゼンテーションの後、パネルディスカッションで意見を交わした。
金融庁のプレゼンテーションでは、つみたてNISAの認知度が2018年の50%から19年に60%まで向上し、口座数も50万口座から188万口座に増加したことに言及。コロナショックはつみたてNISA導入後で初めての大きな市場の混乱となったが、1~3月の投資信託は資金流入超過だったことも紹介された。
■山崎氏「お金の4密を避けよう」
山崎氏はプレゼンテーションで「投資の3原則」を提唱。「長期、分散、低コストで投資しましょう」と説いた。さらに個人がどれくらいの金額を投資に回すのがいいか、若い人はどんな資産に投資するのがいいかといった具体例も紹介。運用する際には「iDeCo(個人型確定拠出年金)、(一般)NISA、つみたてNISAといった税制面で有利な器を最大限に使うのが基本」と述べた。
コロナショックによる相場下落については「リーマンショックやバブル崩壊とは違うメカニズムで起きている」と指摘。先行きを見通すのは難しいとしながら、こうした状況下での投資方針は「余裕があれば追加投資すればいいし、積立投資は将来のためなので、そのまま続けるといい」との考えを示した。
また、「コロナ感染拡大対策として3密(密閉、密集、密接)を避けよと言われるが、金融取引でも同じ」と指摘。セミナーなどの「密閉」空間で「密接」しながら「密集」してお金の意思決定をするのはよくないとし、「秘密の話なんだけど・・・」と寄ってくる金融マンとも距離を置くようすすめた。
■吊られた男さん、コロナで1400万円の最大損失
パネルディスカッションでは、山崎氏と虫とり小僧さん、吊られた男さんが、コロナ下での資産運用について議論した。虫とり小僧さんは国内外の株式を主体として債券、不動産投資信託(REIT)のインデックスファンドで積み立て投資をしており、投資期間は15年にのぼる。コロナ禍では金融資産が「年収以上減った」と明かした。
「長期・分散・低コスト」の投資を実践する吊られた男さんは、投資対象の9割超を株式が占める。直近のピークからの損失額は1400万円まで膨らんだという。それでも「下がった時はあまり何も考えてない」と話し、平常心を保てる理由としては①リーマンショックで6割以上やられた経験②(1400万円が)無くても困らないという考え――を挙げた。
■つみたてNISA、途中でやめないことが大切
つみたてNISAの注意点としては、3人とも「途中でやめないこと」で意見が一致。山崎氏はリーマンショック時に投資をやめてしまう人が続出したことを取り上げ、その後の回復局面で利益を逃した人は「もったいないことをしましたね」と振り返った。
虫とり小僧さんも「ビビってやめてしまうのが最も避けたいこと」と強調。吊られた男さんも「つみたてNISAは20年と長いので、まだスタート地点。一喜一憂しない方がいい」と話した。(QUICK資産運用研究所=西本ゆき、西田玲子)