企業年金の運用担当者をはじめとする300人ほどの年金運用関係者が11月13日から15日の3日間にわたり都内のホテルに集結した。野村グループが17年前からメインスポンサーとして開催している「グローバル・フィデュ―シャリー・シンポジウム」に参加するためだ。
年金運用の最前線を幅広いテーマから掘り下げたシンポジウムでは、基調講演とパネルディスカッションが3日間で25プログラムあまり組まれ、70名近くにのぼる第一線の実務者が登壇。そのうち3分の1が欧米から来訪した運用関係者だった。
■オルタナティブ積極活用で好成績
金利上昇による国内債券運用や為替ヘッジコストの増大に伴うヘッジ外債運用の不調は年金担当者の悩みの種だ。
こうした中でも、比較的好調な成績を維持している企業年金もある。運営責任者の説明によると、運用コンサルタントのアドバイスを基に、ある程度のリスクを取りながらも、債券の組み入れ比率を下げて、オルタナティブ(代替投資)運用を積極活用しているという。
ヘッジファンド、プライベート・エクイティ、プライベート・デット、不動産、インフラなどのオルタナティブは総じて、株式や債券との値動きの相関(連動性)が低いことに着目した動きのようだ。
国内の不動産投資信託(REIT)への投資においても、上場REITではなく、物件組み入れの自由度がより高い非上場の私募REITの活用が増えているそうだ。
その他、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の植田栄治・理事(管理運用業務担当)兼CIOが「GPIFの運用高度化の取組み」と題した基調講演を行い、「アセットオーナーの運用高度化と外部専門家」をテーマにしたパネルディスカッションでは、政府がアセットオーナーの運用高度化に取り組む背景についての説明もあった。
■顧客の最善の利益追求
政府では、資産運用立国プランの策定に向けて、新しい資本主義実現会議「資産運用立国分科会」において、資産運用業に加えて、年金基金などアセットオーナーに関する改革についても議論を進めている。
その背景などについて、金融庁の今泉宣親・市場企画室長兼資産運用改革室長は、「アセットオーナーの運用高度化はあくまで内閣官房を中心に議論されているもの」と断った上で、次のように説明した。
「インベストメント・チェーンを構成する重要な主体(ピース)のうち、企業はコーポレートガバナンス改革、家計においてはNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充など主だった対策を講じてきた。一方、残されたピースとして、資産運用業者とアセットオーナーは重要課題として取り組む必要がある」
「年金基金に限らずアセットオーナーが『顧客の最善の利益追求』に即した運営をしているかどうかは、インベストメント・チェーンの中で資金がうまく回り続けるための鍵になる」
「金商法等改正により年金基金も含めて誠実公正義務の対象となるが、これまで法令に則り運営されてきた年金基金にとって、具体の義務が新たに課せられるわけではないと認識している」(今泉氏)
「第17回 グローバル・フィデュ―シャリー・シンポジウム」のサイト
(QUICK資産運用研究所)