ここ最近、ハイテク株やIT関連株などのグロース株の強さが目立つ中で、「自動化関連株」も物色されている。コロナ後の非接触のニーズにより、中国などの設備投資がけん引役となり、自動化の設備投資が続いている。主要な関連銘柄の期間リターンを比較してみた。
■ダイフク、キーエンス、ローツェの強さ
3カ月のリターンを見ると、三菱電機(6503)とスズデン(7480)を除いたほとんどの銘柄が日経平均株価の13.9%を上回った。3月の新型コロナ後の安値からの全体の戻り相場で、大きく売られていた景気敏感株への買いがどの銘柄にも波及したと見られる。
一方、新型コロナの影響が本格化する以前からの6カ月リターンの比較では、銘柄ごとのリターンの差が明確に見て取れる結果となった。
6カ月リターンが最も高かったのは、ダイフク(6383)で41.6%上昇した。次いで、ローツェ(6323)の29.6%、キーエンス(6861)の15.9%が上位となっている。
■ダイフク、受注残高は過去最高
ダイフク(6383)は、マテリアルハンドリングと呼ばれる物流や製造の現場で使われるモノの搬送装置で世界一のメーカーとなっている。競合のドイツのシェーファーや日本の村田機械などは非上場となっており、日本の上場企業では豊田自動織機(6201)の物流ソリューション事業が競合となる。
新型コロナ以前から四半期毎の受注高と売上高は高水準で推移している。コロナ後には「非接触」のニーズから企業の自動化の需要は続いており、2020年3月期末の受注残は、3979億円と過去最高を更新した。
新型コロナの影響を受け、巣ごもりや外出自粛によるEC(電子商取引)の広がりで物流倉庫の自動化投資が加速している中、期待が高まり25日に上場来高値を更新した。物流や製造現場の効率化は息の長いテーマのため、今後も注目度が高まりそうだ。
■財務と経営力が光ったキーエンス
キーエンス(6861)も各期間のリターンがすべて日経平均を超えており、注目度の高さが伺える。3月の急落局面では、手元資金の厚さによる財務健全性や高収益体質が注目され、強含んだ。その後も戻りの強さを発揮し、東証の時価総額ランキングで通信キャリア大手を抜いて、一時2位となる場面があった。(現在は3位)
キーエンスは生産現場の自動化に使う画像センサーや制御・計測機器を強力なコンサルティング営業部隊により、代理店を通さず直販する高収益なビジネスモデルとなっている。
また、自動車業界などの製造業もさることながら食品や物流、薬品業界などの非製造業のユーザーも多いため、景気変動の波にも強い特性があるため、今後もFA業界の雄として存在感がさらに高まりそうだ。
■業界環境の違いも選別要因に
そのほかにローツェ(6323)は過去1年のリターンが156.3%と突出している。ローツェは半導体や液晶のウエハー搬送装置を手掛けている。足元では半導体業界の微細化投資の再開を受け、受注が回復傾向にある。半導体業界というと自動化が既に進んでおり、開拓の余地が無いというイメージを持たれる方も多いが、未だに製造工程と工程の間のウエハー搬送は、人の手やアナログで行われているなど、まだまだ自動化の余地は残されている。
一方ファナック(6954)、安川電機(6506)の6カ月リターンは出遅れが目立つ格好となっている。ファナックの売上の約半分を占めるとみられる自動車業界向けは量産投資の手控えが続いてる。安川電機のロボット事業も競争が激化しており、自動車業界向けの出荷も多い。自動車業界は中国や米国などで新車販売台数などにやや下げ止まりの機運も出ているが、本格的な設備投資の再開には、もう少し時間が掛かりそうだ。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)