アナリストの業績見通しが一段と悪化している。主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDIは、6月末時点で金融を含む全産業ベースがマイナス72と前月から5ポイント悪化。リーマン・ショック直後に業績不安が広がった2009年4月(マイナス73)以来の低水準を記録した。新型コロナウイルスの影響で非製造業の落ち込みが強まったようだ。
■全業種が2カ月連続でマイナス
製造業DIは前月から2ポイント悪化のマイナス80、非製造業DIは7ポイント悪化のマイナス58だった。算出対象16業種全てが2カ月連続でマイナスとなった。前月と比較して悪化幅が最も大きかったのは建設で33ポイント悪化のマイナス100。次いで食料品が27ポイント悪化のマイナス72となった。対照的に、化学は前月比16ポイント改善のマイナス70、次いで非鉄金属と不動産が14ポイント改善で並んだ。
■ソフトバンクGは業績改善期待、ビール需要急減のサッポロHDには不透明感
3カ月前比で純利益の上方修正率が2番目に大きかったのがソフトバンクG(9984)。保有する米携帯電話サービス大手TモバイルUS株の売却と持分法適用関連会社からの除外に伴い、4~6月期(1Q)に約6000億円の売却益を計上することから業績改善期待が高まったようだ。
その一方で下方修正率が最も大きかったのは、サッポロHD(2501)。5月14日発表した1~3月期連結決算で、純損益が185億円の赤字(前年同期は51億円の黒字)に転落した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響を受けて、外食店向け業務用ビールの販売落ち込みが響いた。期初に公表した通期予想も未定に変更したことで先行き不透明感が強まったようだ。
6月19日から都道府県をまたぐ移動が解禁されるなど、経済活動再開の動きが加速する一方で、新型コロナの感染拡大への懸念がぬぐえない。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、世界の新規感染者数の累計が1000万人、死者数は累計で50万人を超えた。米国が一部地域で規制強化の動きをみせるなど、コロナ第2波への懸念が日増しに強まっており、企業業績の重荷になりそうだ。本決算時には通期見通しを未定とする企業が相次いだが、7月末からスタートする3月期企業の4~6月期(1Q)決算発表時に通期見通しの開示がどの程度増えるか注目されよう。(QUICK Market Eyes=本吉亮)
◆QUICKコンセンサスDIとは◆
アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出する。DIがマイナスなら、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っていることを意味している。5社以上のアナリストが予想している銘柄が対象で、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかが分かる。