新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で金融市場は混乱を極めた。未曾有の危機に直面した金融のプロ達は、この危機とどう向き合ったのか。大和アセットマネジメントで国内株式の運用を担当する椎名諒ファンドマネジャーに聞いた。
■ピンチをチャンスに変える企業に投資
――コロナショックで感じたことを教えてください。
「このような危機だからこそ、世の中の人々が何に困っているのかに向き合い、それを解決するサービスを提供する社会的価値の高い企業が本当に強い企業だと再確認しました。実際にそのような企業の株価は堅調なことが多いです。仮に一時的に下落しても、社会的価値の高い企業ならいずれ回復するでしょう。倒産の危機に陥っても誰かが支援すると信じています」
「新型コロナの感染拡大が短期的に多くの日本企業の業績にマイナスの影響を与えることは避けられません。しかし、危機にこそ普及していくサービスもあります。例えばオンライン診療、オンライン教育、在宅勤務などの導入が増えました。これまで社会的な課題だったにもかかわらず、なかなか普及してこなかったサービスが一気に広がるチャンスでもあり、ピンチをチャンスに変えられるような企業に投資していくことが重要です」
■危機時の社会貢献で競争力向上
――特別に注目した点はありますか。
「危機時に競争力を高められるかどうかが重要なポイントだと考え、企業がどのような社会貢献をしているか調べました。社会貢献や支援活動は消費者や取引先からの信頼感を高め、社会的信用力やブランド力の向上、新たな顧客獲得などにつながり、長期的な競争力を高める取り組みとして注目しています。苦しいときに助けてくれた企業には心から感謝の気持ちが生まれ、いつか恩返しがしたいと思うものです」
「危機に直面した時、自社の問題点と真剣に向き合い、改善していく企業が競争力を高めていけるのだということも実感しました。例えば今回、日本電産(6594)の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)や米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏のような偉大な人でも、自分の間違いに正面から向き合う姿勢がとても印象的でした」
■DX・ 働き方改革 ・ 中小企業支援に注目
――今後の銘柄選びのポイントは。
「ウィズコロナ時代には、新しい生活様式が基本になると見込まれています。投資対象を選ぶ際の大前提は、倒産しないこと。手元流動性や自己資本が十分かなど詳細な分析が重要です。さらに危機によって競争力を高められること、社会的価値が高いこと、デジタル化への対応ができていることなどが企業の優劣を見極めるポイントになります」
――注目しているテーマを教えてください。
「『デジタルトランスフォーメーション(DX)』、『働き方改革』、『中小企業支援』の3つです。新型コロナによって世の中のデジタル化が加速していくでしょう。米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが決算で「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」と語ったように、この1年で10年分のデジタル変革が起きる可能性も否定できない状況です。また、次世代通信規格『5G』の普及により、デジタル化はさらに加速するでしょう。DXに取り組まない企業は今後どんどん競争力が落ちてしまいます」
「働き方改革で特に注目しているのは、緊急事態宣言で導入が広がった在宅勤務の分野です。在宅勤務をうまく活用できない企業は、いい人材を確保できず競争力が低下する懸念があります。在宅勤務の推進を阻害している問題を解決する『電子契約サービス』や『請求書のクラウドサービス』に期待しています」
「中小企業の資金繰り支援は今まさに必要とされていることです。日本企業のうち99%を占める中小企業が元気でなければ、日本は元気になれません。資金繰りに貢献するサービスなどで中小企業が抱える問題を解決し、世の中を元気にするビジネスがこれからの社会で必要とされると思います」(QUICK資産運用研究所=望月瑞希)
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コロナ禍のピンチを、うまく社会や会社の進化につなげたいですね。