6日の中国株式相場が急伸した。上海総合指数は前週末比5.7%高の3332.8807と、2018年2月以来およそ2年5カ月ぶりの高値を回復。18年3月に米国が鉄鋼やアルミニウムの輸入制限を発動する前の水準に戻し、長らく相場の押し下げ要因となってきた米中貿易摩擦の影響をおおむね克服した形になる。ただ、実際の中国国内経済には新型コロナウイルスの影響がまだ残っており、急激な株高進行には危うさも漂う。
■きっかけはPMI
「中国国内投資家のセンチメントが切り替わった」(香港の光大新鴻基の温傑ストラテジスト)。前週から続く上海株の上昇に、市場では驚きの声が相次いでいる。
直接のきっかけは6月30日以降に発表された6月の購買担当者景気指数(PMI)の改善だ。PMIは政府発表の製造業と非製造業、中国メディアの財新などが発表する民間データの製造業と非製造業の4種があり、6月はいずれも前月から改善した。PMIは企業の景況感を聞き取った先行指標であるだけに中国景気の回復期待が高まった。6日は中国の4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率が1~3月期の前年同期比6.8%減からプラスに戻るとの市場関係者の予想が相次いだ。
上昇銘柄も変化している。「ハイテクなどのニューエコノミーから、金融や資源といったオールドエコノミーに資金が回帰している」(東洋証券上海代表処の奥山要一郎首席代表)。6日は中国工商銀行や中信証券といった金融株が軒並み急伸し、大型株で構成する上証50指数は6.8%高となった。国有企業改革の一環として中信証券の合併観測が浮上したほか、証券会社や保険会社の株式投資規制の改革案が相次ぎ、金融株買いを誘った。
■買われすぎの警戒も
金融株を中心とした大型株主導での株高は、官製相場のにおいも漂う。現時点では「政府系資金による目立った買いはみられない」(内藤証券上海代表処・首席代表の王萍氏)との見方もあるが、当局の意向を敏感に感じ取る参加者も多い。香港経由での海外投資家からの買いが増えているのに加え、これまでの中国国内の金融緩和で、投資資金はあふれている。「当局としても、不動産のほか、リスクの高い他の金融商品に投資されるよりは、株式投資を奨励したいだろう」(王氏)との読みがあるという。
上海総合指数の6日終値時点でのRSI(相対力指数、14日移動平均、QUICK算出)は90.24%と、「買われすぎ」とされる70%を大きく上回った。実体経済が回復に向かっているとはいえ、まだ足腰は弱いとすれば、経済と株価のデカップリング(分離)はやはり危うい。また中国の場合は急激な株高や景気改善は当局による引き締めを誘いかねないという事情もある。相場急落には注意が必要だ。(NQN香港=桶本典子)