ソフトバンクグループ(SBG)株が7日、20年ぶりの高値を付けた。ウィーワーク支援を巡るゴタゴタやオイルマネーの縮小懸念で売り込まれた3月の安値から倍以上になり、市場関係者も「不死鳥のようだ」と感嘆する。中国をはじめとするIT(情報技術)投資ブームに乗ってSBGのファンドビジネスの収益が改善するとの期待が高まっている。
■ITバブル以来の高値
SBG株は一時前日比5%高の6214円と、株式分割を考慮したベースでは2000年3月以来の高値を付けた。2000年といえばITバブルのころ。当時、ソフトバンクはヤフーなどネット関連のビジネスやベンチャー企業に積極的に投資し、含み益を増やしていた。
あれから20年。「『中国ITバブル』の追い風がSBGに吹いている」と、ベテランの市場関係者は指摘する。
ITやハイテク企業は中国経済の成長を担う「ニューエコノミー」の旗頭。代表格は半導体受託生産の中芯国際集成電路製造(SMIC)だ。月内に中国版ナスダックとされる上海の新市場「科創板」に上場し、最大500億元あまりを調達するという。香港市場のSMICの株価は5月初めの上場計画の発表後に2倍超になった。
「中国政府が新しい経済の発展に向けて5Gや人工知能(AI)、あらゆるモノがネットにつながるIoTなどIT投資に力を入れるなか、半導体株やIT関連の銘柄に投資マネーが集まっている」(浜銀総合研究所の白鳳翔主任研究員)。SBGが保有する中国電子商取引(EC)最大手アリババ集団(@9988/HK)株は7日、高値を更新した。
■ビジョン・ファンドの穴はアリババが埋める
投資先の企業価値低下で前期に巨額の投資損失を計上した「ビジョン・ファンド」の収益は、アリババ株高に伴って改善する可能性が高いと多くの市場関係者はみている。ウーバーテクノロジーズ株が宅配料理市場の拡大の恩恵で持ち直したり、米市場に2日に上場したばかりの米保険スタートアップのレモネード株が公開価格の3倍になったりと、他の出資先の株価も好調だ。
米国のアップルやアマゾンなど主力ハイテクの「GAFAM」の騰勢はいまのところ止む気配がない。世界の主要中央銀行の金融緩和による過剰流動性が生むマネーが世界のハイテク株に向かうなか、日本企業ではSBGに白羽の矢が立つ。
SBGは保有資産の売却などを通じた財務改善を進めている。ファンドビジネスの拡大が岐路を迎えたという見方もあるが、足元では「保有資産から見たSBG株は割安に放置されていた」(藍沢証券の三井郁男・投資顧問部ファンドマネージャー)。見直し買いの機運が高まり、20年ぶりの高値を演出したという。
「売り方の買い戻しを巻き込めば、まだ上値余地がある」(国内証券会社)との声もあがっている。七夕の日に舞い降りた不死鳥の行く先を市場関係者は固唾をのんで見守っている。(日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥)