QUICK Money World(マネーワールド)

個人投資の未来を共創する
QUICKの金融情報プラットフォーム

ホーム 記事・ニュース 注目集めるESGの「S」、スコア上昇は株価に追い風?
この記事は最終更新から1年以上経過しております。

注目集めるESGの「S」、スコア上昇は株価に追い風?

海外では新型コロナウイルスの感染拡で、食品企業の労働環境や雇用に関する争議に発展し企業の倫理的側面を問われる場面が増えている。欧米株を対象とした検証ではESG(E=環境、S=社会、G=企業統治)の「S」が低下した企業の株は売られる結果となった。ただ日本では成長・財務面でクオリティの高いとされる株が買われ、逆の現象が起こった。短期的にも長期的にみても上昇余地が残されているといえるかもしれない。

■SスコアとS&P500種株価指数

Sスコアが低下した企業のバスケットは多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数を下回った。英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)グループの投資銀行部門であるナットウェスト・マーケットツが生産・加工から包装・流通、食料品店や類似の小売店に至るまでの食品サプライチェーン(供給網)における47社から、ドイツのESG評価会社アラベスクS-RAY社が提供するSスコアが低下した企業の下位10社バスケット化して分析した結果によれば、S&P500を4.3%ポイント下回った。期間は1月31日から5月31日まで。欧米では新型コロナの感染拡大の中、食肉工場などでクラスターが発生するなど従業員の労働環境、また不当な価格のつりあげが行なられるなど企業の倫理観が問われる問題が起こっており、ナットウェストが分析に乗り出した。

一方で、スコアが上昇した企業のバスケットはS&P500種株価指数を16%ポイント下回る結果だった。同社の担当ストラテジストは「(株価はSスコアに対して)ポジティブな動きに反応するのではなく、ネガティブなニュースに反応するという非対称的な動きを示している可能性があり、投資家はパフォーマンスの悪い企業やESGの悪いニュースのある企業を売る方が手っ取り早いのかもしれない。その一方で改善には処理や対応に時間がかかる」との見解を示した。この結果をもたらした要因は、大型株のアルコール飲料メーカー2社の株がバーなどの閉鎖を嫌気されに30%下落したことによるもので、これらを除くと、Sスコアの上昇した企業バスケットは1%上昇しており、S&P500のほか米国の30の食品および飲料会社からなるインベスコ・ダイナミック・フード・アンド・ビバレッジインデックスもアウトパフォームした。

■SスコアとTOPIX

日本の食品関連企業に関しては、Sスコアが上昇した企業はTOPIXをアウトパフォームした。ただし低下した企業はTOPIXに加え、さらにスコアが上昇した企業よりパフォーマンスが優れた結果になった。

※食品関連「S」スコア変化上位・下位 バスケット比較
※期間は昨年末~7月3日
※Sスコアの変化の上位8社、下位8社をバスケット化(下位8社までがスコア減のため)

■「クオリティ株」優勢が続く?

当面は、金融緩和と過剰流動性によって新型コロナの感染再拡大で先行き不透明な環境下でも利益成長が可能であり、安定した財務基盤を備えた「クオリティ株」の優勢が続く可能性がある。SMBC日興証券によれば、実質金利の低下によってクオ リティ株のバリュエーションが切り上がる一方、感染拡大による先行き不透明感によっ て、シクリカルが多いバリュー株が低調な展開にあると指摘した。国内の感染者は再度増え始めており、この構図が大きく変わる兆しはまだ表れていない。

ただし短期的にスコア変化上位の銘柄に上昇余地が残されているといえるかもしれない。

目先は夏場のリバーサル相場が起こるシナリオも考えられるという。同証券では、第一四半期決算で短期的にリバーサルが生じる可能性をみており、その理由として18年以降は、決算と決算の間の期間では、業績が好調なモメンタム株がアウトパフォームする一方、 決算が始まるとリバーサルが起こる傾向が鮮明だったことを挙げた。その他に業績予想リビジョンが 18 年以降のダウントレンドから底打ちした場合には、より強いリバーサルに発展する可能性も排除できないことや、米連邦準備制度(FED) がイールド・カーブ・コントロール(YCC)を導入するがい然性が、少なくとも短期的には大幅低下したことで、米金利が多少は上昇する可能性が出てきたことが理由として考えられる。

■ESG投資が加速

長期的には追い風が吹いている。長期的な視点で安全かつ効率的な運用を行なうことを求められている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が3日に発表した19年度の運用実績では国内株式に占めるESG(環境・社会・企業統治)投資の割合は11.3%と前年比でほぼ倍増し、スマートベータや伝統的アクティブ運用の割合を上回った。ESG指数に連動する運用残高は20年3月末時点で4兆155億円と前年同月比1兆7060億円増加し、 環境や社会などに対する企業の取り組みを投資判断の材料にするESG投資が加速した。

また、日本企業の間で機関投資家の行動指針「スチュワードシップ・コード」を導入する動きも動きも広がっている。6月末時点での導入数は35年金で、1年前の19年金から増加した。日本経済新聞の調査によると、大手企業だけで11年金を導入を検討しており、金融庁が企業の環境や社会課題への取り組みを重視するよう促しており、今後も一段と増える可能性がある。ESG投資の普及に弾みがつきそうだ。QUICK Market Eyes  川口究)

<金融用語>

リバーサルとは

同じ満期日、行使価格のコールの買いとプットの売りで先物の買いポジションと同じ効果が得られることを利用し、先物のポジションオプションポジションでの鞘を抜く裁定取引の一種。

 

著者名

QUICK Market Eyes 川口 究


ニュース

ニュースがありません。

銘柄名・銘柄コード・キーワードから探す

株式ランキング

コード/銘柄名 株価/前日比率
1
23,740
+6.74%
2
41,770
-0.26%
3
1,717
-2.99%
4
16,585
-2%
5
4,646
+5.2%
コード/銘柄名 株価/前日比率
1
167
+42.73%
2
440
+22.22%
3
3,405
+17.21%
4
1,022
+17.2%
5
1,054
+16.59%
コード/銘柄名 株価/前日比率
1
1,699
-22.73%
2
9399
ビート
2,730
-20.4%
3
1,342
-16.33%
4
1,216
-15.14%
5
5527
propetec
974
-13.88%
コード/銘柄名 株価/前日比率
1
41,770
-0.26%
2
23,740
+6.74%
3
16,585
-2%
4
8,210
-3.47%
5
26,080
+1.32%
対象のクリップが削除または非公開になりました
閉じる
エラーが発生しました。お手数ですが、時間をおいて再度クリックをお願いします。
閉じる