アップルが業績面でコロナ禍への強い抵抗力をみせつけた。2020年4~6月期決算で売上高は市場の減収予想に反し、5四半期連続で増収を確保した。すべての事業で売上高を伸ばし、成長力に対する悲観論を打ち消した。同時に発表した株式分割の実施で個人投資家の買いが一段と強まりそうだ。
4~6月期の売上高としては過去最高だった。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「この業績は当社の製品が顧客の生活で果たす役割が大きい証拠だ」と自画自賛した。コロナまん延による在宅勤務・学習の需要でパソコン「Mac」やタブレット端末「iPad」の販売が大きく伸びたことが、発言を裏付ける。この期から初めて売り上げに計上したiPhoneの廉価版「SE」もオンライン販売が好調だった。
4~6月期のiPhoneなどの販売上振れを予想していたのはモルガン・スタンレーのケイティ・ユベルティ氏だ。同氏は「アップルは成長を維持するためにiPhoneの購入サイクルにかつてほどは依存していないと投資家は改めて認識するだろう」と指摘していた。
【主要部門の売上高】
主要部門 | 20年4~6月期 | 市場予想 |
iPhone | 264億1800万ドル(2%増) | 222億100万ドル |
サービス | 131億5600万ドル(15%増) | 131億3100万ドル |
Mac | 70億7900万ドル(22%増) | 60億2800万ドル |
iPad | 65億8200万ドル(31%増) | 48億5400万ドル |
ウエアラブルなど | 64億5000万ドル(17%増) | 59億7900万ドル |
(注)カッコ内は前年同期比、予想はQUICK・ファクトセット。
投資家が長期的に注目するのは、着々と伸びる「リカーリング(継続課金型)」ビジネスが占めるサービス部門だ。
サービス部門の売上高は主力のiPhoneの半分にまで成長した。4~6月期のサービス部門は15%増え、水準は過去最高だった1~3月期(133億ドル)とほぼ同じだ。同部門の売上高営業利益率は60%を超え、利益貢献度が大きい。
米証券ニーダムはアップル製品のLTV(ライフ・タイム・バリュー=顧客生涯価値)の向上が長期的に業績を押し上げると指摘する。LTVとは、アップル製品を使い続けた顧客がサービスや製品に支払う累計額を表す。
ニーダムはアップル製品をプラットフォームとする顧客は世界で9億5000万人いると推計、今後11年間の累計で1人2000ドルの粗利益の増加につながると試算した。目標株価はウォール街のアナリストで最高の450ドルに設定する。
今秋にも発売される次世代通信規格「5G」に対応した新機種への期待も高い。コロナによるサプライチェーン(供給網)の混乱で発売の大幅な遅れが懸念されていたが、決算説明会では「(例年に比べ)発売は数週間遅れる」(ルカ・マエストリ最高財務責任者)と影響は小さいと述べた。数週間ほどなら、年後半はハードの売り上げが収益を支える。
【アップル決算の主な項目】
主な項目 | 20年4~6月期 | 市場予想 |
売上高 | 596億8500万ドル(11%増) | 522億3700万ドル |
純利益 | 112億5300万ドル(12%増) | 88億9400万ドル |
1株利益 | 2.58ドル | 1.99ドル |
(注)カッコ内は前年同期比、予想はQUICK・ファクトセット。
7月31日の米株式市場のアップル株は急騰し、前日比10.5%高の425.04ドルで引け過去最高値も更新した。★PER(株価収益率)は過去10年では最も高い水準にあるが、リーマン危機前の07年に30倍台後半を付けていた。当時と比べると稼ぐ力、収益構造ともに大きく変わっている。
アップルは決算と同時に株式分割の実施も発表した。8月24日時点の株主が保有する1株を4株に分割する。分割に伴う株価水準の低下で、新興のスマホ証券のロビンフッド経由で個人の買いが一段と勢いづく可能性がある。幅広い投資家層にアップル株を保有して欲しいとの、同社の自信の表れともいえる。(NQNニューヨーク 張間正義)