半導体検査装置のアドバンテスト(6857)が7月31日の東京株式市場で急落した。前日に比べ15%安の5700円で引けた。この価格は当日の制限値幅の下限、いわゆる「ストップ安」でもあった。同30日に新型コロナウイルスの影響で非開示だった2021年3月期の連結純利益が前期比33%減になりそうだと発表。市場予想の7%減を大幅に下回つたことが嫌気された。
同社が7月31日に開催した2020年4~6月期決算の電話会議では「メモリ-」「SoC(1つのチップに通信や計算など様々な機能を搭載する半導体)」「OSAT(組み立てなど後工程受託業者)」などへの言及が目立った。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
米国が5月に発表した中国の通信機器大手、華為技術(ファーウエイ)などへの取引規制強化の影響が大きい。規制強化によりスマートフォンの後工程の組み立てを受託するOSATが設備投資を抑制した。スマートフォンに搭載するSoC向けの検査装置(テスター)への投資を保留する動きが業界全体で拡大した。
メモリー向けは、データセンター投資への拡大などにより前年比で増加すると見込むものの、収益性の高いSoC向けの落ち込みを補えない。
アナリストやマスコミの質問では、SoC向けの先行きの見通しに強い関心が集まった。
吉田芳明社長は、受注は7~9月期が底となり、その後の改善を見込んでいるとし、OSATのサプライチェーンの再構築には、半年から1年程度の時間がかかるだろうとの見方を示した。阪本公哉常務は下半期は大きな増加は見込んでいないとしつつも、21年度にかけては、高性能コンピューター向けや先端半導体の量産が計画されているとした。
さらに吉田社長は、21年度は各国の経済対策や新たな技術の出現で携帯端末向け以外の半導体が増え、まだまだ明るい未来があると期待していると付け加えた。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)